異世界ディープステート

@seidou_system

異世界ディープステート

「よくぞ召喚に応じてくれました。光の戦士よ……」


「ここは一体……」


 壮麗な石造りの広間に一つの魔法陣があり、そこから光とともに現れた男にティアラを冠した少女が呼びかけた。戸惑う男に少女は続ける。


「この国は、いまディープステートにより侵略の危機にさらされているのです」


「なんて?」


「ディープステートの力は強く、恐ろしい軍隊を持っています」


「あ、そのまま進めるんですか」


「奴らは自軍の兵士にワクチンを投与することにより、強靭な肉体と引き換えに理性を失った怪物に変えてしまうのです」


「俺の知ってるワクチン概念と違うなー……。異世界ってことでひとまず納得するけどさあ」


「また奴らは陰謀に長け、奴らの卑怯な策略により私達レッドクリムゾン紅ルージュ共和連邦国は泥沼の戦争に引きずり込まれてしまいました」


「固有名詞にしては赤すぎませんか、国名」


「この危機を打ち破るために、光の戦士であるあなたをお呼びしたのです!!」


「戦争の解決を個人に任せるってどうなんですか」


「かのディープステートを率いる魔大統領を打ち破るには、光の戦士の力が必要なのです!!」


「魔王じゃないんだ。ステートだからか」


「魔大統領に通じる武器は、この世界のどこかに隠された光を帯びた聖剣……その名も聖剣光帯せいけんこうたいのみ。そして光の戦士のみが民衆の希望を束ねてそれを振るうことができるのです!!」


「ちょっと胡散臭さがリミット超えてませんかね」


「お願いします!!異世界でも光の戦士として戦っていたあなたならば!!聖剣光帯を手にし、ディープステートを打ち破り、衆生を救うことができると信じてます。どうか、どうかこの国を救ってください、勇者山本太郎様!!」


「多分同姓同名の別人と間違えてますよ」


 その後世界を救う勇者、山本太郎の物語はここから始まった。事実人違いだったし、ディープステートの侵略も勘違いだったため割とあっさり終わった。

 全ての冒険を終え元の世界に変える山本太郎はただ一言「お前らもっと落ち着け」と言い残したと伝えられる。


<了>

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