第1話 2章
「契機は戦線離脱するまでだな」
リュウの危機に現れたそれは。
今までの吸血鬼とはまた違う見た目オーラをしていた。
下顎のラインには(吸血鬼なのに)
淡いピンクの鱗が並び、腕はとても細くも美しい筋肉がついていて、髪は赤茶のオールバックでなんだか不良ぽさがある。
「あの女『最悪な』状態の俺を起こすとは
何がしたい?」
***
(読まなくてもいい)
プロフィール
天下乃(あまかの)
髪は赤紫一色
非合法なヴァンパイアハンター
***
場面は戻り洋館の大広間
今はもう血に染め上げられることが
決定した戦場。
「私としたことが取り乱しました失礼ぶっ殺します」
先に動いたのは映だった。
「恐ろしく速い!?」
キューマ、赤く胴体が無い羽だけのコウモリの様な見た目で代表的な低級吸血鬼。
吸血鬼が奴隷化されている現代では一家庭に一体はいる、だが一体一体は非常に弱い。
だが映は複数のキューマに自信の血を呑ませ強化する事で戦闘に用いる。
カーティスに届いた拳は低級の吸血鬼キューマによって加速されたモノだった。
「受け切れるのかよ!」
だが映の拳が真に届くことはなく片手で受け止められていた。
そしてこの状況は映にとってまずい。
「頭ががら空きこのまま殴り潰します……!?」
映と違ってカーティスの拳はしっかりと貫いた。
5体のキューマを。
カーティスが動揺している間に映の蹴りがヒット。
後ろにあった階段に風穴を開ける形で吹っ飛んだ。
カーティスに二度の驚きが走った。
相手の吸血鬼への信仰心を利用したのでもの凄く性格が悪い。
カーティスは受け身の成否を確かめ起き上がりながら考える。
ーーまずいですね、攻撃は複数一気に入れても防御されてしまうでしょう、私以上の馬力を与えねば。
「そうですね」
にやり次の瞬間カーティスは脱兎のごとく
階段を駆け登った。
「逃げるきか!?」
***
常夜には主に三つの派閥があり。
日の元を歩けない吸血鬼を憐れむ
陽哀派。(ようあい)
吸血鬼の偉大さを尊敬する
月喝派。(げっかつ)
そして吸血鬼の力を求める
血望派(けつぼう)
ちなみにカーティスは月喝派です。
***
映も直ぐに追いかける。館中に床を蹴る音が響くカーティスを見失ってはいないただ地の利はあちらにある。
その懸念が追い抜けない理由となって映を縛る。
ーーアクティブなおじさんだな。ただ逃げ切ることも出来ないぞ。
大きい館内を暫く走り回ったのちカーティスは突然高い天井を突き破って屋上にでた。
空中で同じく屋上に出ようとする映を吟味していように見える。
映も次第に跳躍し両者屋根の上に出揃った。
「魔力による身体能力強化お上手ですね」
魔力は吸血鬼と契約することで人にも貸し与えられるエネルギーで性質として全てのエネルギーにロスなく変換出来るというものがある。これが吸血鬼は奴隷である理由だった。
そしてカーティスの言う魔力による身体能力強化とは魔力を運動エネルギーに変え自身の運動能力に足すことだ。
ーーそれはお前もだよ! 俺の疲労を狙った
のか?
機動力では優っているだろうと思い次で仕留める為に映は深く集中する。
四肢全てにキューマを纏う技『サクリファイト』
ーーこれで決める。
最初の3倍の速度本当なら受け止めるなど
叶わない攻撃。
だがカーティスは受け止めようともしていなかった。
ーークソ! しくった!
キューマは灼熱に包まれ燃え尽きていた。
突然失った勢いで映はカーティスの背後まで
転がり込んだ。
そう映は忘れていた吸血鬼が太陽に弱い事を。
「ですがね、結局一瞬でもあれば私の攻撃を殺すには充分でしょう私のならね」
「ダハァ!」
カーティスの思惑は叶い。
10体のキューマを貫き映の体から、
骨が折れる鈍い音がした。
ーーなんでだよ!
先ほどの驚きとはあべこべなことが
目前にあった。
映の体に鉛を落としたのは吸血鬼でその"吸血鬼は燃えていなかった"。
なのに以前太陽は燦々照りつけている。
「私もね映くんと同じで紅魔術は使わないんですよ、吸血鬼由来の魔術はね」
近年の魔術は吸血鬼の血の性質によるモノ
であり、それを紅魔術という。
カーティスの胸先には一冊の本が浮いている。
「これは約五百年前の魔術師が吸血鬼を研究する際に出来た別ルーツの魔術であり、効果は吸血鬼の弱点の無効化、その名も無法者の成功『アウトローサクセス』」
カーティスは勝利を確信した不気味な笑みを浮かべる。
***
カーティスは罰を望み。
苦しんで死ぬように
わざと止めをささず。
ただ見つめる選択をとっている。
***
映は大量の出血で視界がぼんやりし始めていた。
ーーまずい骨が逝った、そして恐らく東京の吸血鬼は太陽で燃えないあるいは銀も効かないか? いや多分魔術で対処可能だ。今はまずあの司教をどうにか。
映の低級吸血鬼キューマによるバフは
自身の血を吸わせてキューマに強化を
施すモノ。
そしてそれをジェット機構のように扱う。
ーー大丈夫だキューマから血を補給すれば失血死の線はない。クソ! でも直ぐには動けそうにない。だがキューマを動かすのに血は関係ない!
まず自身のお腹にキューマを出し血を遅らせる。これで失血死はしない。
次に映の"影"から無数のキューマが飛び出し
球形を作る。
キューマで成した球なのだから太陽の如く燃えている。
だがこの場に居た敵方には事の本質を
理解するのが遅れた。
表面のキューマが陰になればすぐに全てのキューマが燃え尽きる事はない!
『夜襲群』
キューマの群れは真っ直ぐカーティスの元へ。
咄嗟に回避を試みるも無理である。
滑稽なほどに全ての攻撃が直撃しやがて全ての群れは燃え尽きた。
そして応戦に駆けつけた吸血鬼も術が解けたことで呆気なく瞬く間に燃えてしまった
だがこの男カーティスそう簡単に死にはしなかった。映に殺す気が無かったのも要因ではあったが彼はまだ立っていた。
「ハァハァ……ハハハハ!」
渾身の一撃を受け明らかに無事では無い。その証拠に後ろから黒い靄が広がっているそれは撤退を意味するのだろう。
極めつけには落とした魔導書を回収する素振りがない。
「一度退きます、そうだ手土産に教えて差し上げましょう吸血鬼の契りを無効化する方法
吸血以外の方法で動物の血を与えるんです」
そうすることで別の生物としての尊厳を得る。
その事を伝え終わった瞬間、靄は消えた。
残ったのは肋が折れた映と閉ざされた
魔導書だけであった。
「天下乃は出来ればで良いって言ってた、まあ後であの本でも回収しなくちゃな……イテテ」
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