ふうせん

夏目かや

第1話

「待って!お願い」

「重いんだよ、もう無理。じゃぁな」

「やだぁ~置いて行かないで」


「もう。あっちゃん!勝手にテレビをつけたらダメでしょ」

「ママ。あのね、あっちゃんあの女の人にふうせんをあげる。

たくさん膨らませたふうせんをあげるの」

「えっ、どうして」

「あのね、あのね。あのお姉さん重たいんだって。

だから、お兄さんに追いつかないの。だから、あっちゃんお姉さんにふうせん沢山あげるの。

そしたら軽くなってお兄さんに追いつくよ」

「そうなの?でもあっちゃんがふうせんを届けた時にはお姉さんはもうきっといないよ」

「そうなの?でも、あっちゃん、ふうせんを届けたかったな」

「困ったわねぇ。

そうだ!ママがお姉さんに電話を掛けてあげる。

ふうせんを沢山膨らませて持つとお兄さんに追いつくよって。

それでいい?」

「うん!電話してね。そうだママにもふうせんをあげるね」

「えっ!どうして?」

「だってママ体重計に乗って、フーッと息をはいていたから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふうせん 夏目かや @natume0605

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る