閻魔街

ミニトマト

第1話 【始まり】

【閻魔街(えんまがい)とは、いわゆる城下町のことである。ただ、普通の城下町とは違った不思議なところだ。】



「高良〜、凪〜、出かけるわよ〜」


「「はーい」」


中学3年生の、小野高良と小野凪。

二人は、仲の良い双子だ。


「どこ行くの?」


「神社よ!もう冬よ?凪たちは、高校受験の祈願しにいかなきゃじゃない?」


そう、二人は中学3年生でもう冬の季節。

受験勉強まっしぐらだった。

だが、二人は多才だったためあまり苦労はしていなかった。



「結局、あなた達はどこの高校行くの?」


「僕は、スポーツ科のところ行く!」


「俺は、私立の特進の方に行く。」



「あー、いいわねぇ。高良は部活の成績が優秀だったし、凪は頭いいもんねぇ。」



「着いたぞ〜。」


高良達が向かったのは、合格祈願で有名な地元の神社だった。


「合格できますようにっと、て高良お前長えよ。どんだけ願ってんだ。」


「だって、落ちたらどうしよ…。」


高良は何も考えていないように見えて意外と心配性だ。

何がそんなに心配なのか、俺には理解ができない。心配していたら、時間の無駄なのに。


「高良は、心配性ねぇ。大丈夫よ。」


「そうだぞ〜?お前は天才だからな!」


「母さん、父さん…、ありがとう!」


そうして、高良達は合格祈願を終え家に帰った。




「あ、あれ!!?ない!!!」

「何が」


「保健室の美人先生からもらった、うさぎのキーホルダーがないんだよ!!!」


「神社に落としたんじゃねぇの?」


「まじかぁぁぁぁ!!!ちょ、僕取りに行ってくる!!」


「ま、まて!夕方の神社は危ないって父さん言ってたぞ。」


「んなの、ただ不審者が出るからっていうだけだろ?とりま行ってくっから。」


「お、俺も着いていく!」





外は、夕日で彩られオレンジの光が高良達を照らした。


冬の夕暮れは、何かさみしさを感じた。



「どこだ〜??」


「どこ探してもねぇぞ」


「おかしいな……。」


高良のやつ、どんだけ探してんだよ。

もう、日が暮れちまう。


「おい、もう帰…」


「あ!美人先生!!!!」


「ちょ、お前待てっ!」



俺は、ちゃんと高良の腕を掴んだはずだった。ちゃんと、高良は俺の前にいたはずだ。なんだ、これ。



なんで、高良が目の前にいない?



「おい、高良!!?」


あれ、あの『美人先生』って奴もいない!?


「おい、どこだよ!?高良!…ん?」


凪の足元には、赤いうさぎのキーホルダーが落ちていた。


「これって、高良が言ってたやつ…。」


とりあえず、家に帰って母さんに伝えなきゃ。


あたりは、暗くなり始め凪を不安に包みこんだ。



「母さん!」


「ん?あ、お帰り。」


母さんは、洗濯物を畳んでいた。

いつもなら、とっくに夕食の準備をしているのに。


「それより、聞いてくれ!高良が!」


「たから?初めて聞く名前ね。また、新しく友達できたの?よかったじゃない!」


は…………??



「母さん、変な冗談、やめてよ、、。

高良だってば。あの、運動バカだよ…。」


「凪、友達をバカって言うのはだめよ〜?」


なんだこれ。まるで、高良の存在がないみたいじゃないか。


「ごめん、今日は寝る。夕飯大丈夫だから。」


「あ、ちょっと〜。凪〜?」



凪は、部屋に戻った。


「あれ、、なんでベッドも机も、制服だって、、一つしかない…。」



高良と凪の自室は、二人で一つだったため、ベッドも机も2つあるはずだった。


凪は、状況が理解できなかった。

なぜ、家具がひとつなのか。

なぜ、自分だけ高良の存在を覚えているのか。


なぜ、高良が消えたのか。


「どこにいんだよ……、。」




あの時、美人先生を見つけて、そっちに行こうとしたら凪に手を掴まれて…、、


なんだここは。



あたりは、商店街のような場所で、コスプレ(?)をしている人たちが歩いていた。空は真っ赤に染まり、冬のはずなのに、とても暖かかった。


「なんだ、、ここ……。」



次回 出会い

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