20240213 絶不調②
発熱して何も食べられない。
家族にうつったら困るので、自主的に隔離生活に入る。
夫はいつも通りに出勤。
毎朝「行ってらっしゃい」と言ってあげてるけど、今日は無視。
顔も合わせていない。昨晩の食器のことといい、大したことないと勝手に決めつけてるに違いない。それどころか、行ってらっしゃいも言わないのかと、またムッとしてるかもしれない。
こっちはそれどころじゃない。勝手にムッとしとけ。
「どんな感じ?」
出勤前に様子を見に来てくれた息子に、症状と仕事を休むことを報告した。
「夕飯は何か買ってくるから、食べたいものあったらLINEして」
頼りになる。ありがとう。
職場に電話をして、欠勤を申し出る。
発熱外来に電話して、午後一番で受診できるよう予約する。
久しぶりにマジで気力を絞ってお風呂に入り、自転車で病院に行った。
病院の外に設置されたアウトドア用っぽいのテントの中で診察を受ける。
出入り口は閉ざされてるとは言え、野外で服をめくって胸に聴診器をポンポンされるって、どんなプレイなんだ。医師って、いつもこんなことしてるんだろうか。仕事だしな。してるんだろうな。
コロナでもなく、インフルでもなく、ウイルス性胃腸炎だった。
病院から戻りぐったり。
久しぶりに辛い。
息子から「どう?」とLINEが来たので、ウイルス性胃腸炎であることを伝える。
少したって夫から電話が来る。
「まだ、調子悪いの?」
まだ……。
「病院で診てもらったらウイルス性胃腸炎だった。夕食は息子が買ってきてくれるって。喋るの辛いから、じゃ」
耳から離したスマホから「えっウイルスせい。。。」と夫の声が聞こえたが、かまわず通話終了ボタンをタップした。
息子が帰宅し、ポカリやウィダーインゼリーを枕元に置いてくれた。
「夕飯食べたら洗濯とかして、そのあとは自室にいるから、なんかあったらLINEして」
ありがとう、助かります。
8時過ぎに夫が帰宅し、「コンビニでデザートいっぱい買ってきたけど食べれる?」と、なんだか嬉しそうに差し出してきたのは、濃厚たまごプディング、チーズケーキ、シュークリーム、ランチパックのたまご、あんぱん、ナイススティックだった。
「甘いのばっかり」
「甘いのなら食べられるかなと思って」
「悪いけど、食べられない」
見ただけで気持ち悪くなってきた。
「なんだ、せっかく買ってきたのに」
ひと言多い。
水分補給と、少しのウィダーインゼリーを胃に入れて薬を飲み、あとは寝ることで精一杯。
まだ9時前。夜が長そう。
うとうと寝ていたら、夫が寝室に来て小声で言う。
「マーガリンが空になったんだけど、どうすればいいんだ? そのまま、また冷蔵庫に戻しておけばいいのか?」
はっ?
質問の意味が分からない。
酔った勢いで調子に乗ったB級ジョークか?
が、とりあえず優しくてお門違いな答えを返してあげた。
「マーガリン足りた? 足りなかったら買い置きが冷蔵庫の奥に入ってるよ」
「足りたよ! そうじゃなくて、空になったマーガリンの容器はどうすればいいのか聞いてるんだよ!」
本気で聞いてる。
しかも、いきなり大声でブチ切れはあり得ない。
限界だ。
ふらふらと上体を起こして、思ってること全部言ってやった。
「捨てるに決まってるでしょ! 空の容器を冷蔵庫に戻すとかってバカなの? そんなもん聞かなくたって誰だってわかるわ! 昨日だって自分の使った食器も洗わずにそのままだし。自分の奥さんが具合が悪いって寝てるんだから、呑んでばっかりいないで食事くらい自分で完結させなさいよ! 胃腸炎だって言ってるのに甘いものばっかり買ってきて、せっかく買ってきたのにって、食べられない私が悪いわけ? なんで思いやりの気持ちとかないの? そっちが訳が分からないこと言ってるのに逆切れして強い口調で言うとかおかしくない? こういう会話がもう嫌だから、もううんざりだから離婚したいって言ったのに。ちゃんとするから勘弁してくれって頭下げてきたのそっちでしょ。だったらちゃんとしてよ! 胃腸炎辛いからもう二度と寝室には来ないで!」
「ごめん、悪かったよ」と夫の小さな声と一緒にドアが閉まった。
ぐったり。
その夜、下痢と嘔吐と涙で、苦しかった。
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