20240211 ある日の休日の過ごし方

『今日お昼過ぎにディズニーのお土産を持っていくね』

 朝8時に娘からLINEが来たとき、私はまだ布団の中でパジャマだった。


 朝4時に一旦目が覚めて、本を読んだりコーヒーを飲んだりして有意義な朝活を終え、それからまた寝て、ちょうど2度寝から目覚めたところで、起き上がってしまえば、家事でバタバタ動き回らなければならない未来がすぐそこにあったから、布団の中でゴロゴロしていた。

 そこへ、娘からLINEが来たもんだから、既読にしようかどうか迷ってしまった。前日に娘からの連絡がなかったから油断してたよな。

 今日は都合が悪いからと言って断ろうかなとも思ったけど、娘夫婦はすぐ近く住んでるからそうもいかない。


 休日なのにやらなきゃいけない家事が山ほどあるのは何故だ。

 だるい体を奮い立たせて動き始めた。

 自分の身支度して、洗濯機回して、掃除機かけて。そのうち息子が起きてきて、あっという間に外出してしまった。今日はすっごく揺れる座席でガンダムを観るんだそう。それはそれは楽しそうで何よりです。

 休日の夫は昼近くまで起きてこない。目は覚めてるのかもしれないけど、部屋から出てこない。これはずっと前から変わらない。

 愛犬の介護が日増しに大変になっていく中でも、夫のペースは変わらなかった。

 愛犬の認知症が進み、徘徊や昼夜逆転で息子と私は疲弊し、夫に手伝って欲しいと、何度か言いかけたが言えなかった。それは、飼い始めた時に夫が言った「俺は何も手伝わない。お前らで面倒見るなら飼っていい」この言葉がずっと有効だったから。

 過去に一度、何かの理由で夫に協力してほしいとお願したことがあったが案の定「俺は面倒見ないって言ったでしょ、出来ないなら保健所に連れていけば」と言い放ち、悪魔にしか見えなかったことがある。子供たちが聞いていなかったのが不幸中の幸いだったが、結局夫は、私の前だけでしかそういうことは言わない。

 そんな夫でも、たまに散歩にも連れて行っていたし、シャンプーもしてくれたり、ソファで一緒に昼寝とかもしていたから、可愛がっていたことも確かだけど。それは習慣ではなく、夫の気分次第で突如始まる可愛がり方だったので、私の方が気を使って大げさに感謝の言葉を言ったりして、茶番でしかなかった。

 それで、昨晩のペットロスの話だもの。何も言えない。


 ドロドロで悶々とした気持ちで掃除をしていたら、いきなり鼻水がすーっと垂れた。

 鼻血か? と思ったが透明だったので安心したのだけど、そのあとはもう止まらず、目も痒くなって涙も出て、これは完璧に来たなと確信した。

 花粉症だ。毎年ちゃんと来るようになってしまった花粉症が、今年もちゃんと来てしまった。しかも、初っ端なのスタートダッシュがえげつない。

 鼻水と涙をティッシュで吹くもんだから、1時間も立たないうちに顔がボロボロで、これなら泣いたって分からないよなと思ったら、悶々としてる気持ちが溢れて本当に泣けてきてしまった。


 娘夫婦が来る頃には少し落ち着いて、どうにかいつも通りに振舞えたと思う。

 そういえば、今は閉店してしまったお肉屋さんの店主に「奥さんはいつも元気があっていいね」と言われたことがある。

 そう、私はいつも元気なのだ。いつも元気って馬鹿みたいだけど人前ではいつも元気にしている。

 無理しているのかもしれない。それでも、私が元気に接すれば、たいていの人は笑顔で返してくれるから、無意識にそうしてしまう。

 だから今日もそうした。


 もつ煮が残っていたので、いや、2日目のモツ煮は一段と美味しくなっていたので、娘夫婦に食べる? と聞いたら、「うん、食べるー!」と喜ぶ娘の声にまぎれて、娘の旦那君が小さく言った。

「やったぁ、モツだ!」

 可愛いなぁ、もう。

 毎週作ってあげたくなるよ。


「腹減った~」と言いながら帰宅した息子が、「やっぱ、2日目のモツだよな」と言いながら、どんぶりによそったご飯にモツ煮をぶっかけて食べてる。

 こっちも可愛いなぁ。


 今日はなんだか色々正解な気がした休日だった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る