テンパる

Rotten flower

第1話

私には三分以内にやらなければならないことがあった。真っ暗な画面に映っている残り時間は赤く染められていて緊迫感を醸し出していた。元々は二十四時間あって、電話をかけてみたり、掲示板に助けを求めてみたり、色々なものに縋ってみたけど無駄だった。

こんな事を考えていたって、刻一刻と時間は減っていく。財布を確認すると諭吉が七枚入っている。通帳を見ると、¥28000と書かれている。彼の欲する学よりもあまりに足りなすぎた。


「で、佐良は何もできずに三分を過ごしたわけ?」

「うん、そう。今もどうしようって悩んでるの。」

こう、笑ってはいけないことはわかっているのだが声の出ない笑いがいつの間にか出てしまっている。こんだけ無知な子が未だに日本にいたなんて思ってもいなかった。

「あぁ、幸せというべきか。不幸というべきか。」

「どういうこと?」

「わかった。その画面どうしようとしたら出てきたんだっけ?」


私はこの前のイベントのことを調べていた。「片桐市 イベント」と検索窓に入れる。あれは楽しかった。桜と巡った色々なスポット、風景はいまだに覚えている。そんなことを思い出していると、検索結果が表示されていた。

私は桜とは違ってネットに疎い、どのサイトも同じようにしか見えない。私は取り敢えず信頼できそうな名前をクリックした。


「それであの画面に行ったわけね。」

「桜も同じ画面に言ったらテンパるでしょ!?」

私は大きなため息をつく。

「あんた本当にピュアだね。」

佐良は人の闇を知らないのだろう。こんなに人を信用する子が友達にいるなんて私は幸運なのかもしれない。まぁこういうときには不運に変わるのだが。

「遅れて振り込んでも間に合うかな…」

「振り込むな。取り敢えず桜は部屋から出ずに私の言うことを聞け。」

「うん…」

「あれは架空請求ってやつだ。まぁ、細かいことは省くが…、要するに世の中は佐良みたいに優しい人ばかりじゃないんだ。あんたみたいな人に漬け込む嫌なやつがいるんだよ。」

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