世界の出来事
空には珍しく星が瞬いていた。
不吉を恐れて月は姿を隠した。
こだまが
昼に生きる者も夜にある者も、吐息と言葉を消えるものだと信じている、その行く先。
夜が衣を脱いで、更に深い夜になった。
昼が知ることのない触れることもない遠い夜。
こだまのよだれで湿った唇は、今度はすうすうと風を吹き出し始めた。
闇に
「神とは奇妙な行いをするものだ」
不思議そうに男が言った。
「誰もが留まり堅牢に生きることを望む世界で涯を目指そうとするなどと。 存在が揺らがぬ故の傲慢なのか」
女が顔を上げた。
絶叫する。
「お前が盗んだ、 わたしの全てを!!
何者でもないお前が!! わたしは神などと偽って」
男はせせら笑った。
「偽ってなどいない。神とは恵みを与える存在であり、そして我らは恵みを世界に
女が喚く。
「おとなしくしなさい。あなたは名を得たではないか、それで満足するべきなのだ」
女は男が満足そうに見る自分の顔を爪で掻き
「愚かな。自らを害する行為はこの世界に不要なものだ」
女の腕が消えた。
「その足も。あなたはわたしから逃げる必要はないのだから」
あがった悲鳴は途中でびしりびしりと震える空気に変わった。男が「声も」と言ったから。
思い通りの沈黙に満ち足りて和やかに女にほほえみかける。
「足りぬものなどないよう手厚く尽くすわたしがいるのだから、必要なものなどほとんどない。何も持たずあるといい」
静かになった部屋で男が呟く。
「さあ、町を作ろう。壁を築こう。
あなたの名を冠した偉大な町を」
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