第2話 お隣さん
どうやら転生して5年がたったようだ。この世界では前世の時のようにあまり魔術が使われていないらしい。代わりに、5歳になると、神々からのスキルが配られるらしい。父の書斎にあった「星の成り立ちと神々について」「王國の歴史」「アランの迷宮攻略記」「Sランクスキルとその所有者」を母さんに見つからないように読んでいた。ちなみに父さんは、魔物を狩ってくるなどと言って「なまくら片手剣」を手に家からでていった。
(神といえばあのいけ好かない屑どもか…。ナルシストな太陽神に姑息な暗黒神やら俺のことをぼっちの王様とか言いやがってぇ...お前らは社会不適合者だっつーの!) 悪態をつきながら本を読んでいると、
「ルリ、あそぼう!」
と、ナナが家にやってきた。俺たちは家が隣同士でいわゆるお隣さんというやつだ。
「うん!遊ぼう!!」
俺は本を置き二人で走りながら外に出た。ちょうど今は日が真上に上りかけていて、実のなった小麦がキラキラと輝いていた。今俺が住んでいるのはエマヌエーレという名前の村だ。ここから大きな町までは、20キロルほどある、ド田舎にある。
「ねぇ、ルリ、いつもの場所まで競走ね!よーいドン!」
「もう、ちょっと待ってよ~!」
俺たちは村のはずれにある丘のてっぺんの大樹まで競走することが、恒例行事となっている。そして先に出発したナナが遠くに見える。
(ふむ、少し大人げないが魔法を使おう。純粋な脚力では負けているからな。)
俺は小さく唱えた
「纏え、雷を」
俺の体に薄い蒼の雷が纏う
「上級魔法 迅雷」
蒼の雷を纏いながら体が加速する。そして、ナナを越し俺が先に大樹に到着した。
「もぉ、ルリはいつも先に行くんだから!」
「でも、ナナちゃんはズルしたでしょ~」
「ズ、ズルじゃないもん。ルリが先に行くのが悪いんだもん」
たわいのない会話をしながら木に登る。
すると、
「魔獣だー!魔獣が柵を乗り越えて村にはいってきたぞー!」
「えっ!ル、ルリ逃げようよ、はやく!」
ナナちゃんがてんぱっているが、もう木の下にもEランクの魔獣[ゴブリン]が集まっている。
「きゃあ、こ、こっちに来るなぁ。あっちにってよ、しっ、しっ。」
(ふむ、ゴブリンごときこれで十分だろう)
「聖なる光は、邪悪を貫いて」
「初級魔法 聖槍ー5連」
魔石を突かれたゴブリンどもが紫の塵となって消える。
「へぇ?」
ナナちゃんが慌てているが5本の雷突では、この数だと焼け石に水だな。ならば、
「神罰よ、ここに降れ」
「中級魔法 雷突ー紫電・迎撃の型」
範囲に入ったゴブリンから魔石になり消えて行く。迎撃の型は、自分から半径3Mより内側にいる敵意に対して自動的に攻撃する魔法を使ったアーツだ。
(ふむ、この体になって初めての雷突だったが、なかなかの威力だな。)
「ルリ、これ何?」
「なんか分からないけどナナちゃんを守らな
いとって思ったら雷が出てきたんだよね」
(ナナちゃんには悪いけど黙っておこう)
「おーい、ルリ、ナナ大丈夫だったか〜」
遠くから父さんたちの声がする。
「うん、大丈夫だよー!」
「パパー」
「ナナ、心配したんだぞ」
「お父さん、私は、大丈夫だよ」
「パパ、ルリがね、雷で魔獣を倒したんだよ!」
「なに?もしかして、スキルか?」
(まずい、怪しまれたか?スキルとやらと勘違いしてくれるのはいいが、スキル希少なものであれば大問題だぞ。)
「まだ、5歳なのに、スキルを使えるようになるなんて、ルリは、天才か?」
この様子だと、この世界の住人はほとんどスキル持ちのようだ。しかし、俺の年でスキルを使えるやつがまだいるようだ。まぁ、正確には魔法なのだが勘違いは正さなくてもよいだろう。
「ねぇ、お父さんはスキル持ってるの?」
「あぁ、そうだな。俺は《魔法剣》を持っているぞ。」
「ちなみに、僕は《聖域》・《魔弾》をもっているよ。」
「パパ、スキルは、何個もてるの?」
「うーん..そうだね、勇者と呼ばれる人たちは、10個もっているらしよ。」
「ゆうしゃ?」
「うん、1000年に一度現れる、神々の寵愛を受けたひとたちだよ。」
「いまは、北の勇者と東の勇者がいたよな。あ、それと、勇者はそれぞれ、固有のスキルをもっているらしいよな。」
「7歳になったら、スキル鑑定の儀があるからね。うちのナナもスキルもちだといいな。」
「そうだな、俺みたいじゃなく複数持ちだといいよな。」
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