【短編こわ~い話】鬼の慟哭
神崎あきら
プロローグ
岡山県にはお伽噺「桃太郎」のモデルになった人物の伝説がある。
桃太郎こと
桃太郎伝説はかつてこの地にあった吉備国が大きな権力を持っていたということに由来している。岡山県総社市にある造山古墳は規模にして全国第四位、作山古墳は第十位にランクインしている。大阪、奈良がほとんど上位を占めるランキングの十位以内に岡山県が二基も切り込んでいることからその勢力の強さを計り知ることができる。
岡山県に伝わる桃太郎伝説を紐解き、さらに鬼の存在の謎を解く知的な旅への誘いだ。
岡山市北区吉備津にある吉備津神社は桃太郎のモデル、吉備津彦命を祭神としている。本殿の屋根のつくりは「比翼入母屋造」といわれ、全国唯一の様式で「吉備津造り」とも呼ばれる。千鳥破風が二つ並ぶ壮麗な姿が壮麗だ。
吉備津神社のある吉備の
岡山県古代吉備埋蔵文化センターを起点に物語は始まる。
不思議な老人の声に導かれ、山頂へ続く山道を登っていくと平坦な広場に出る。その先には白い鳥居が見える。桃太郎の墓とされる御陵だ。実際の被葬者は明らかではないそうだが、宮内庁では第七代孝霊天皇の皇子、大吉備津彦命の墓に定められている。吉備津彦命は二八一才で亡くなり、ここに葬られたとされる。
老人はさらに奥へ進む。木々に囲まれひっそりと佇む社がある。これは山岳信仰の寺、八徳寺だ。ここは温羅を祀る社という説がある。山の中、唸り声が微かに鳴り響く。
八徳寺の奥の院では赤い前掛けをかけられた巨石に遭遇する。これは「穴観音」と呼ばれ、岩の穴に耳を近づけるとかつては潮騒の音が聞こえてくるという。
不思議なことに、潮騒の音に混じって合戦の刀の音や矢が飛ぶ音が聞こえてきた。海を挟んで吉備津彦命と温羅が激戦を繰り広げた様子が再現されている。
そして、老人の声はしめ縄の先へ誘う。
坂道を下っていくと、そこには温羅の墓とされる「石舟古墳」がある。古墳の中を覗いてみると、そこには暗い穴が口を開けていた。大きくなる唸り声。鬼の声だ。
老人が温羅の真実を語ると、唸り声はやがて風に消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます