今後のラノベ作家が目指すべき姿
前回、ラノベのピークは過ぎたということを数字を用いて説明しました。およそ2010年ころ、というのが結論でした。
さて、では今後のラノベが目指すべき姿はどうなのか。結論を出す前に「カクヨムでヒットして書籍化して、シリーズ化して、アニメ化したい」という方の幻想を壊します。
前回述べたとおり、ラノベのピークは2010年ころなのですが、トップ10のアニメはまだまだ続いています。転スラは2024年4月から新しいシリーズがアニメで始まりますから、分かりやすい例です。
「ほら、アニメ化までこぎつけるチャンスがあるではないか」と思う方もいるでしょう。転スラは2014年に刊行されました。アニメは2018年からです。そしてアニメ化までに17巻出ています。これだけの巻数を出版するには一作目がかなり売れないと厳しいわけです。アニメ化を目指すのは非現実的です。
では、シリーズ化はどうか。ここで、2015年開催の第一回カクヨムコンテストで大賞を受賞して書籍化された作品を見てみましょう。
・誰にでもできる影から助ける魔王討伐 2024年6巻発売
・横浜駅SF 2巻の音沙汰なし
・ヒーローは眠らない 2巻の音沙汰なし
・僕の妹はバケモノです 2巻の音沙汰なし
・勇者のクズ 2巻の音沙汰なし
・平安時代にタイムスリップしたら紫式部になってしまったようです 2巻の音沙汰なし
・うさぎ強盗には死んでもらう 2巻の音沙汰なし
7打席1安打です。もちろん、ミステリーなどは続編を作るのが難しいですが。あくまで第一回カクヨムコンテストの結果です。しかし、これが現実です。
そもそも、シリーズ化を目指す場合はストックが必要ですし、カクヨムコンテストで受賞するためには区切りが良く、かつ続きを読みたい、とさせる必要があります。かなり難しいでしょう。
では、今後の書籍化を狙うラノベ作家が目指すべき姿はどうか。まず、前提として、コンテストに応募する作品は全力を出してください。シリーズ化はまれです。出し惜しみはやめましょう。
ラノベ作家ではなく、カクヨムでの話になりますが、週間ランキングは異世界ファンタジーが圧倒的です。カクヨムユーザーは異世界ファンタジーの読者層なのです。カクヨムのリワード目的の方は、異世界ファンタジーを書きましょう。
本題の書籍化を目指す場合ですが、純粋な転生もの、悪役令嬢もの、VRMMOものは避けましょう。なぜかというとライバルが多すぎることもありますが、読者はテンプレばかりで食傷気味だからです。
もちろん、これらのジャンルでも書籍化は狙えますが、編集者の目にとまるかは別の話です。
では、どうするか。ジャンルの掛け合わせを変えましょう。簡単なことです。読者が好きな転生もの、VRMMOものに、いつもとは違うジャンルを掛け合わせましょう。
筆者は普段、この手の小説は書きませんが、転生ものといえばチート、ハーレムなんか多いかと思います。あとは成り上がるとか。これらは異世界に限らずファンタジー全般に言えます。
では、純粋な転生もの以外に何を掛け合わせるか。私はマイナーなミステリーやホラーを掛け合わせることを提案します。
少なくともカクヨムにおいて、ミステリー、ホラーはマイナージャンルです。つまり、これらで上位を目指すことは異世界ファンタジーで上を目指すよりはるかに楽なのです。すでにSFのジャンルにVR MMOという設定で転生ものの派生がランキング上位を占めています。こちらは手垢がついているので、今からの参戦はおすすめしません。
さて、ランキング上位を目指せる可能性がミステリーやホラーにあるのなら、これを使わない手はないでしょう。それなのにファンタジーとの掛け合わせが少ないのは設定含めて難しいからです。しかし、一度できればランキング上位に居座り、編集者の目にとまり書籍化という流れも大いにあると考えます。カクヨムコンテスト等もミステリー部門で応募できます。
食文化で例えてみましょう。一時期、タピオカが流行りました。そして、ここ最近はラーメンが流行っています。しかし、いずれもブームが過ぎ去り、倒産が相次いでいます。余談ですが、2023年はラーメン店が45件倒産、休廃業は29件だそうです。
さて、これらからも分かるとおり流行りがあれば廃れます。ラノベにおける単純な転生もの、悪役令嬢ものはこれから廃りの道をいくと思います。その移住先としてSFのVRMMOが選ばれているのです。しかし、これも将来はそう長くない、というのが筆者の考えです。
ですから、ミステリーやホラーと掛け合わせることを提案します。先駆者はパクられて負けるのでは? とお考えの方もいるでしょう。これが起きる可能性は低いと考えます。
異世界ファンタジーの週間ランキングを見てください。上位の作品は星やフォローがいっぱいです。これらはすでに多くの人から「これは面白い作品だよ」とお墨付きをもらっているのです。必然、新規読者も集まりやすく、ランキング上位に居座ることができます。つまり、好循環です。
ですから、一度ランキング上位に食い込めば、そうそう簡単に落ちることはありません。それに、追随しようとする作品は構想を考えるところから始めるので、ワンテンポ遅れます。
最後にまとめます。
2010年がラノベのピーク。アニメ化やシリーズ化は厳しい道のりで、シリーズ化ありきで作品を書かない。単純な転生ものは伸び悩んでおり、近い将来に廃れる。転生ものと他のジャンルを掛け合わせて、上位を目指して書籍化への道を開く。
かなり難しいことは承知のうえです。わたし自身、書けと言われても書けません。これが正直なところです。書けるのであればとっくの昔に書いて、ランキング上位にいます。
しかし、これからラノベで書籍化を目指すという皆さんには私より力量があるはずです。ですから、あえて敵に塩を送ります。皆さん、単純な転生ものはやめて新しい境地を切り開きませんか?
※追記
私は主戦場がミステリーとSFです。特にミステリーへの想いが強いです。最近、謎を出して解決編がないものを見かけます。これらはミステリーとして出来上がっていないので、編集者の目にとまりません。必ずスッキリと全てが解決するようにしましょう。
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