魔導

久光 葉

— エピローグ —

 倭国わこく大乱 —— 。

 弥生時代末期。倭国で起こった争乱。

 後に邪馬台国やまたいこくの倭女王となる卑弥呼ひみこ。巫女であった彼女を王に擁立することで争乱は終結した。

 列島規模で繰り広げられた日本史上初の大規模な内戦。

 その戦争を終結させるため、或る一族が暗躍した。

 卑弥呼はその力を脅威とみなし、一族郎党皆殺しを命じる。

 なぜなら彼等が、人間を超越した能力をもっていたからだった。

 魔導 —— 。

 遥かいにしえ。その力の歴史は紀元前まで遡る。

 彼等の人間離れした身体能力。そしその不可思議な力。

 ある者はシャーマン。ある者は暗殺集団として。その力が覚醒したとき、瞳が血の色に染まりし光を帯びる。

 争乱終結後、彼等は人里離れた山奥でひっそりと暮らしていた。

 そこに卑弥呼の命を受けた邪馬台国の軍勢が襲いかかる。

 —— 大虐殺。

 歴史の闇に葬られたかにみえた。

 その当時。邪馬台国と対立し戦闘状態にいた国—— 狗奴くぬの国。

 男王彦御子ひこみこは、その僅かな生き残り達の身柄を庇護。彼等は彦御子に卑弥呼への復讐を誓う。狗奴の国と共に邪馬台国を潰すべく、戦いを挑んだ。

 その最中、女王卑弥呼が死んだ。

 狗奴の国はその一族と共に邪馬台国を滅ぼし、ヤマト王権となる。

 だがまたしても、その力を怖れたヤマト王権の軍勢が彼等に襲いかかった。

 しかし彼等はいち早くその動きを捉え、北へ北へと逃れる。

 彼等は自らを熊襲クマソの生き残りと称し、美濃みのの国(現在の岐阜県)の山奥深く—— ひっそりと身を潜め、世情を窺った。

 戦国の世では、伊賀者と共闘し再び暗躍する。

 平安の世となり、彼等は日本全国へと散った。

 いつどの時代においても、けして表舞台には姿を現さなかった。

 文献にもその詳細や記録は何一つ残されていない。

 一族のその後の消息を知るものは、誰一人としていなかった。

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