第17話 現場検証

目の前に広がっている光景は

一時間前に見たソレとは明らかに異なっていた。


露天風呂のすぐ近くの地面に

全裸の男が倒れていた。

男の裸体が月明かりに照らされて

ぼんやりと闇の中に浮かび上がっていた。

男はピクリとも動かなかった。


ボクは恐る恐るソレに近づいた。


北条清家にそっくりな男の顔が醜く歪んでいた。

男が死んでいることは素人のボクでもわかった。

そして。

男の体はまだわずかに濡れていた。


初めて見る死体に血の気が引いたボクは

軽い眩暈を覚えた。

ボクは死体から離れて地面にしゃがみ込んだ。


「・・絞殺ですね」

その時、五代の声が聞こえた。

彼女は屈み込んで頼家の死体を調べていた。

「ロープのようなモノで首を絞められて

 殺されたようです」

どうやらこの世界では

探偵よりも助手が有能らしい。


ボクは三度、大きく深呼吸をした。

新鮮な空気を取り入れると

僅かに気分が楽になった。

「・・他に何か気付いた点はありますか?」

ボクは頼もしい助手に呼びかけた。

「私も死体を見るのは初めてなので、

 詳しいことはわかりませんが、

 一つおかしな点が・・」

五代の言葉に続いて

「リーリー。リーンリーン」

と虫が鳴いた。

「・・男性の象徴が切り落とされています」

その言葉にボクはハッと息を飲んだ。


「い、一旦、ここを出ましょう」

ボクは辛うじて言葉を絞り出すと、

フラフラと立ち上がった。

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