バッファローの眼に映る紅き空

アリスさんです

単話です

未来の人類は科学技術の頂点を極めたが、その栄光は突如現れた「オックス」と名乗る宇宙軍団によって陰りを見せ始める。彼らは地球の上空に気象兵器を設置し、特定の紫外線を遮断することで青い地球を赤く染めた。このことにより農作物の成長を阻害され、人類は未曾有の飢饉を引き起こされた。


オックスは「平和的な交渉」を装いつつ地球の支配権を主張し、赤く染まった空は彼らの勝利の象徴となる。地球の人々は、この危機から脱する方法を模索し続ける。そんな中、エウロペ・バイソン博士が宇宙から接近してくる小惑星群を発見する。この小惑星群は、オックスに対する唯一の希望となる。小惑星群「バッファロー」と命名されたこれらの小惑星群を利用して、バイソン博士は通称マタドール作戦を立案する。


マタドール作戦は、バッファローをオックスの宇宙艦隊にぶつけ、彼らを撃退するという大胆不敵な計画だ。ただし、直線的な動きではオックスに避けられるのも必至であることから地球最高技術である核の威力とスイングバイを駆使することになる。スイングバイは、天体の重力を利用して宇宙船や小惑星の軌道を変更する方法だ。いわばマタドール作戦は地球と人類が織りなすコンビネーションプレイだ。これにより、バッファローは変化球となりオックスの艦隊に向かう加速、不意打ちを可能とする。この作戦の成功は、地球にとって最後の希望であった。バイソン博士のチームは、限られた時間の中で団結し、それぞれの専門知識を活かして作戦を前進させる。


作戦当日、地球側の核が絶対的に不足している事に作戦決行時に気づいた。限られた時間の中で決行するために計算班がエナジードリンクの飲み過ぎてしまったためケアレスミスを引き起こしたのだ。エナジードリンクは前借りを超え、イカロスの翼と化す。核の威力の計算に失敗し、バイソン博士らは落胆した。しかし、作戦に失敗したかに思えたが、何故かバッファローはオックス艦隊に突き進む。結果的にスイングバイが成功し、オックス艦隊はバッファローにより壊滅する。地球からは歓喜の声が宇宙空間に響き渡る。しかし、勝利の喜びも束の間、バイソン博士たちは近距離で観測したバッファローの正体を知ることになる。


バッファローの正体は、宇宙に生息可能な特殊な宇宙バッファローであることが判明する。彼らは偶然にも「地球のそれ」と同様に赤い物体に引き寄せられる習性を持っており、オックスの気象兵器により赤くなった地球が、宇宙バッファローを引き寄せたのだ。地球の科学者たちは、気象兵器の除去に奔走し青い地球を取り戻そうとするが、何もかも遅すぎた。


宇宙バッファローは、習性に従いUターンして再び地球に戻ってくる。人類が勝てないオックスを破壊した宇宙バッファローの突撃である。宇宙バッファローはこれまでも、そしてこれからも全てを破壊しながらただひたすら前に突き進んでいくだろう。突撃してきた宇宙バッファローは地球を破壊し尽くし、人類、いや地球はこれまでにない規模の災害に直面することになる。しかし、地球の最後の日々を予見していた一部の科学者と指導者たちは、火星への移住計画を密かに進めていたため、地球の活動停止を迎える前に、数百万の人々は宇宙船を通じて新たな住処、火星へと旅立つことに成功する。人類は不幸中の幸いながらも火星の厳しい環境に適応し、新しいコロニーを築き上げた。しかし、火星の色により、人類はいつか宇宙バッファローが来るかもしれないという不安が常に付きまとい続ける。暗い宇宙の中で彼らは変わらず紅き空に向かい走り続けていくだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バッファローの眼に映る紅き空 アリスさんです @arisusun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ