魔女の毒

 貴方に毒を盛ったのよ、と彼女は言った。

 へぇ、と僕は相槌を打つ。そのままもぐもぐと食べ続けていると、彼女はどんどん顔色を変える。

「どうして何ともないの⁉︎」

「どうしてって言われても」

 ペロ、と指に付いたクリームも舐め取る。

 彼女が作ってくれたのは、甘い甘いバタークリームのケーキ。紫色だし、髑髏っぽい意匠もあったけど、ハロウィンみたいで素敵だなって思うだけで。

「何ともないよ、美味しかったし」

 それに、君が作ってくれたから。

 そう答えると、彼女は真っ赤になって顔を隠した。

 魔女の毒を跳ね除ける唯一の方法は、二人の間に真実の愛がある事――そんなことを僕が知ったのは、彼女の夫になった後のお話。


 終【お題:甘い(2023/02/04)】

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