我儘幼馴染との晩酌
おじゃが
我儘幼馴染との晩酌
俺には、三分以内にやらなければいけないことがあった。それは……話せば長くなる。
俺は、かなり久しぶりに週末に定時で会社を上がれたから、ゲームをオールでする予定だったわけよ。
そしたら、俺の幼馴染の榎本ゆかりが、急に家に上がり込んで、三分以内につまみを作れって言いやがるんだ!
「アポ無しで家に上がるのはどうかと思うぞ、ゆかり」
「ええい、そんなこと言ってるから彼女ができないのよ、圭介。三分以内に私を唸らせるつまみを作りなさい。どれだけ貴方に勉強面で助けてやったと思ってるの」
そうだった。ゆかりは大学病院で看護師をしていて夜勤明けだったっけ。目に大きく青クマができている。恐らく寝不足だろう。
「仕方ねぇな、出来は期待すんなよ」
そうゆかりに俺は伝えると、冷蔵庫の中からさけるチーズを取り出し、一口大にカットする。卵焼き専用のフライパンにカットしたさけるチーズを置いて、中火でこんがり焼くと、つまみにピッタリな焼き焼きチーズの出来上がり。
「三分以内に作れたぞ。食え」
俺は幼馴染に料理を差し出す。彼女が一口食べると、頬が緩んでいた。
「おいちい……」
まぁ、そんなギャップがあるからこそ、どれだけ
「お酒持ってきたからアンタにもおすそ分けするわ」
「お前が飲みたいだけだろ」
「そりゃあ飲みたいわよ。上司が高圧的で、もう私やってられないわ!」
「俺だって今日は定時で帰れたが、いつもは終電まで電車乗れないんだぞ!」
「……」
あたりに沈黙が降り注ぐ。
「社会人って大変よね。私たちが保育園の頃は何も知らなくて楽しかったけど」
「だな。生きるって大変だよな。俺もクレーム処理大変だった」
「とりあえず乾杯する?」
「そうする」
グラスにゆかりが持ってきたスーパードライを注ぎ、乾杯した。
「アンタも大変だね。圭介はメーカー勤務だっけ」
「うん。商品に不都合があったりとかすると電話かかって来てめんどくさいよ」
「なんか、こんな夜更けに無茶ぶりしてごめんなさい……」
と幼馴染は申し訳なさそうにすると、
「まぁ、アンタにしか
と悲しげに笑って見せた。
「じゃあ今度はお前が三分で料理して返してくれよな」
と俺が笑うと、
「じゃあ、昔を懐かしむためにもレトルトカレーにしますか」
とゆかりがほくそ笑むので、ゲームができなくてもまぁいいやと思うことにした。愚痴も吐けたからな。
まぁ、こんな週末もありかな。
我儘幼馴染との晩酌 おじゃが @ojaga1006
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