橋のたもとで

 ■■橋の側を通ると、亡くなった祖母を思い出す。私の手を優しく引いて、この辺りを歩いてくれた。いつしか私は、自分が死んだら、祖母が迎えに来てくれるんじゃないかと期待するようになった。

 やがて家庭も生活も荒れ、耐えられなくなった時、私は■■橋まで泣いて走った。おばあちゃん、私を助けて!連れて行って!……そう叫んだ橋の向こうで、誰かが手を振っていた。

 私は、嬉しくなってそのまま走り出そうとした。足が止まった。

 顔も分からない、真っ黒な人影。背格好も、祖母とは似ても似つかない。

 ……誰だ。あれは、誰だ。

 その黒い影は動画のように、同じ動きを繰り返す。私は呆然と、橋のたもとに立ち竦んでいた。


 終【お題:橋(2020/07/04)】

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