自殺志願者だった男
夜海野 零蘭(やみの れいら)
自殺志願者だった男
何をするために生きている?
こんなどうしようもない人生で何がいいのか?
仕事する意味はあるのか?
……
毎日そんなことを考えて、30半ばにして人生がいやになった。
心療内科に行くと、うつ病の傾向があるとのことだ。
そんなつまらない理由で、俺は「この世から別れを告げたい」と思いビルの屋上へ来た。
今は廃屋となった元病院だ。
ちなみに俺は、今は彼女や奥さん、子供もいない。
別の場所で暮らす両親は、弟家族と同居して可愛い孫もいるから問題ないだろう。
どうせなら人気のない場所で消えよう…
親父、おふくろ、弟…こんなどうしようもない俺でごめん
そう思った。
古い病院は鍵がなく、人もいないため屋上に行くのは容易かった。
心霊スポットとされている病院だったが、なぜか不気味な雰囲気は感じなかった。
屋上にきて、俺は靴を脱いで錆びた手すりに手をかけた。
そのとき、後から人の声がした。
「まだこっちに来るな」
どうやらお年寄りの声のようだった。
後ろを振り返ると、懐かしい顔が見えた。
「…じいちゃん??」
「鷹弘(たかひろ)、お前はもともと強い子だ。だから自信を持て」
一瞬信じられなかったが、声の主は子供の頃によく遊んでもらった祖父だった。
俺は
「…じ、じいちゃん…ありが…」
と、礼を言おうとしたらすぐに消えてしまった。
ああ、この病院はじいちゃんが10年前にガンで亡くなった病院だった。
不気味さを感じなかったのは、じいちゃんが見ていたからか?
俺は屋上からぼんやりと空を見た。
雲ひとつない空だった。
「…じいちゃん、やっぱり俺、生きて人生の意味探すわ」
俺は病院の屋上を後にした。
自殺志願者だった男 夜海野 零蘭(やみの れいら) @yamino_reila1104
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