第32話 のんびりモフモフスローライフ
ミャロを吸い込む。
……なんか言い方が変だけど。
子猫になったミャロはおとなしく俺の顔にはりついている。
そのおなかの匂いを肺いっぱいに吸い込んだのだ。
直後、俺の全身にマナが充満し、魔力が充填される。
よし、いける。
俺は呪文の詠唱を開始した。
「ハンギン、マギン クツィリョ カ ウパン プトゥリン アング アキング マガ カアウェイ、ドゥルギン アット パタイン シラ……!」
それを見た小針浜さんが叫ぶ。
「伏せろぉぉぉ!」
同時に俺は魔法を発動させる。
「
俺の放った空気の刃は、ブゥゥンと唸りを揚げて回転しながら飛んでいく。
それはサブマシンガンを構えた男の一人に直撃した。
スパァン!
というキレのよい音とともに男の右足首が切断される。
「ぐわぁぁぁ!」
倒れ込む男。
くそ、モンスターならいくらでも殺してきたがな。人間相手はやりづれえ。
そう思った瞬間、足首を切断されて倒れたまさにその男が俺に向けて横になったままサブマシンガンを俺に向けた。
タタタタタン!
軽い射撃音とともに、パラベラム弾の連射が俺を襲う。
だけど、俺はすでに防壁魔法と防護魔法を重ねてかけている。
9ミリの豆鉄砲なんて通すわけがなかった。
とはいえ、ずっと攻撃を弾いていたらバリアの効果もそのうち薄くなってしまうし、そのままうちおくわけにもいかない。
やむなし。
やむなしだ、これは。
俺を殺しに来てるやつ。
だから、ほかにどうしようもないんだ。
俺は叫んだ。
「
魔力で飛翔する原理不明の回転する空気の剣が、その男の顔に直撃した。
……これ以上はあまり描写したくないな。
血と脳漿が飛び散り、彼は永遠に銃の引き金を人に向けて引く、などという悪行を二度と行えない身体になった。
〈おお、魔法のほうが強い!〉
〈サブマシンガン程度だと魔法障壁破れないんだな〉
〈対物の12.7ミリですら弾いてたぞ〉
〈これは魔法スキルの勝ちか〉
〈魔法は銃よりも強し!〉
「おい、これ以上無駄な殺人はしたくないんだ。俺等を大人しく地上に返してくれ」
俺は静かにそう言った。
バンギャ姿の小針浜さんはため息をついてサブマシンガンを地面にカチャンと置いた。
「はあ~~~~~~。仕方がないわね。私達の負けよ。地上への通路はそこ、そこの影に通路があるから、そこをまっすぐ行けば階段がある。ここは地下六階だけどモンスターはあらかた私達が殺したし、三崎さん、あなたの実力ならすぐ帰れるでしょう。行きなさい」
どうやら勝負は決したらしい。
よし、これでいったんダンジョン探索は終わりだ。
あとは警察とか自衛隊に任せて、俺はあのボロ貸家でしばらくのんびりモフモフスローライフ――いや金がねえなあ。
圧倒的勝利を手にして、俺はゆうゆうと通路をゆく。
足取りも軽い。
床を踏む俺のブーツ、カチンッ‼️ となんかしらんけど足元で音が鳴った、その直後俺の足元に設置されていた地雷を中心におおよそ半径十メートルが爆風に巻き込まれた。
「あーーーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは! 素敵な花火‼️」
そんな小針浜さんの哄笑も、もちろん爆音のせいで俺には聞こえなかった。
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