第31話 保育園や幼稚園
「ラパ、イカウアイマギン、イサンワラガンシールドナブマッピサアキングカタワン。ガマラウナパデルナウォール、マティバイナパナナティリ。アンイキングピノプロテクタハン ナマギックバリア、ティナタウ イトン!」
俺は一気に魔法の詠唱を終える。
右腕が燃えるように熱い。
魔法の詠唱を速め、その威力を増大させる術式のタトゥーが発熱しているのだ。
そのタトゥーの効果で、こんな長い詠唱も実質にはほんの一瞬で唱えることができる。
さらには。
ミャロを吸うと魔力が復活するのが今までの経験でわかった。
ということは魔力消費が激しい魔法を使い放題というわけだ。
つまり、俺の持つ最大防御魔法を使うことができる。
俺はしびれるように熱くなっている右腕を突き出し、叫ぶ。
「
すると俺の手の平から青い光球が出現し、直後俺たちの身体を覆う。
それとおじさん課長の放った対物ライフルの弾丸が俺を直撃するのとは同時だった。
はっきりいってこんな近距離で撃つような威力の銃ではない。
銃なのか大砲なのかわからんくらいでかい武器なのだ。
ミャロを抱えたまま、俺の身体が数メートル吹っ飛んだ。
「いってぇぇぇぇっ!」
くそ。
これはこれで大ダメージだ。
こんな吹っ飛ばされてたら勝負にならない。
こうなったら重ね掛けだ!
「ビュハイナラカス、カパンギヤリハンニャルパ、ルムカニャイサン、タンカパンナマグリリグタスサアキン!
直後、おじさん課長の対物ライフルが再び火を噴いた。
バゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
という轟音とともに12.7ミリ口径の弾丸が俺を襲う。
人間を撃つためとはとうてい言えないその巨大な弾丸は、しかし俺の防護障壁に一度ぶつかってその威力を減じ、俺の身体を覆う防護の魔法にはじかれ跳弾となってダンジョンの壁にめり込んだ。
それはそれとして、
「すっっっげええ痛いなこれ……」
〈待て待て待て待て〉
〈痛いで済むわけねえだろ草〉
〈人間があのライフル食らったら粉々になってるぞ普通〉
〈防弾の装甲車破壊するライフルやぞ〉
〈なんだ主は装甲車より硬いのか〉
〈おれら今世界で初めての現代兵器vs 魔法スキル見てるんだぜ〉
〈やっべええええ! これどっちが勝つんだ⁉〉
〈っていうか今の衝撃でボディカメラが吹っ飛ばされてるんだけど〉
〈いやちょうどいい画角で床に落ちたみたいだからこっちのが全体見渡せて見やすいぞ〉
〈主はこんな顔してたんか〉
〈まあまあイケメンじゃん〉
〈チーじゃん〉
〈どっちだよw〉
弾丸があたった腕をさすっている俺を見ておじさん課長が驚きの顔で言った。
「…………おお、まったく傷もついていない……魔法スキルとはこんなにも……」
だがそれだけで敵の攻撃は止まらない。
今度は小針浜さんとほかの男たちが、俺に向かってサブマシンガン――こいつは威力もそんなにないし、射程も短いけど小型で取り回しがよく、狭い屋内、つまりダンジョン内を制圧するにはぴったりの武器だ――を向ける。
「モンスターを飼う変態野郎は死ね」
そしていくつもの銃口が分間600発を誇る発射速度で俺に向けて9mmパラベラム弾をばらまき始めた。
だけど、しょせんサブマシンガン、これは拳銃の弾を連射するだけの銃だから、対物ライフルの直撃を耐えた俺の防壁魔法や防御魔法を貫けるわけがなかった。
ほとんどの弾は最初の防壁魔法によって跳ね返され、いくつか貫通できたヘロヘロの弾は当然防御魔法で跳ね返される。
「くそ、人に向けて銃を撃ってはいけませんって保育園や幼稚園で習うことだぞ……やるからにはやりかえされる覚悟があるんだろうな?」
俺はそう言ってミャロのおなかを鼻にくっつけた。
〈なにこの絵面草〉
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