第27話 ミャロのおなか
俺の魔法によってスピードを増したミャロの動きはまさに神速、といってもいいものだった。
最強クラスのモンスターであるはずのレッドドラゴンが、その速さにまったくついていけないのだ。
残像だけを残してレッドドラゴンを爪で切り裂いていくミャロ。
「グオォォォォ……!? 猫ごときが……っ!」
血液だろうか、傷口から青い体液をまき散らしているレッドドラゴン。
ミャロは息をつくためだろうか、いったん壁に対して垂直に“着地”する。
その一瞬、レッドドラゴンはあることに気づいたようだった。
「その首輪……そうか、貴様人間どもにそこまで支配されてるのか……ならば……」
そう、ミャロが身に着けている首輪、それは俺の死をスイッチとしてミャロの首を絞めつけ殺す。
レッドドラゴンはそれに気づいたのだった。
燃えるようなぎらつく目で俺を睨みつけてくる。
「貴様を――殺せば――!」
直後、ドンッ! という衝撃音とともに、レッドドラゴンが一直線に俺に向かって飛んできた。
「
とっさに魔法の障壁を作る。
レッドドラゴンの巨体はドォォンッ! と大きな音を立てて障壁にぶつかる。
だが。
さすが最強の名をほしいままにするレッドドラゴンだった。
「グォァァァァァァッ!」
障壁に張り付いたまま咆哮をあげる竜。
ミシミシミシッ! と障壁にヒビがはいっていく。
まずい、このままでは破られる。
「ミャロ、戻ってこい!」
「はいにゃ!」
壁をまるで地面のように走って俺の許へと戻ってくるミャロ。
俺が味方と認識しているものは障壁の影響を受けないのだ。
「吸わせろ」
「言い方がエロいにゃですよ?」
「どこ吸ってほしいんだああぁん?」
「きっっっっっしょにゃ」
軽口をたたきながら俺はミャロの首筋に顔をうずめる。
クンクンクン。
うん、いい匂い。
でも、なんか足りない……。
獣臭さが足りない気がする……。
「おい、ちょっと猫に戻ってくれ」
「…………できるかなぁ…………意識して猫になったりはしないのにゃですよ……。うーん、えいっ!」
ポムッという音と共に猫に戻るミャロ。
うん、やればできるじゃないか。
俺は黒い子猫を持ち上げる。
「みゃおぉぉん」
鳴き声をあげるミャロのおなかを顔に押し付けた。
うむ、そうそう、これこれ。
この獣臭さ、乳臭さ、女の子臭さ。
それが混じりあったなんともいえない香りが俺の鼻腔を満たし、俺の身体を満たし、俺の脳を満たし、そして俺の精神を満たした。
「おのれ、愚弄しているのかッ!」
怒りの声とともにレッドドラゴンが障壁を破った。
それと同時に俺は詠唱をはじめる。
「ガリトナハンギン、マギングイサンマチリスナタリムアットマナハンサアキングカマイ! パヒントゥラタンアンタグタボイニカアワイアットパグダダラニカパヤアン‼」
レッドドラゴンがそのでかい顎を開いて俺にとびかかる。
俺はその口中に向けて魔法を発動した。
「
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