第15話 保護責任者遺棄致死罪
「は?」
思わず自分でも声が出た。
俺の全身が光に包まれる。
不思議な痛みがうすれ、血が噴き出ていた銃創もふさがっていく。
この感覚、間違いない、魔法の力だ。
だけど、ここダンジョン内じゃない、地上なのになんで魔法が使えたんだ?
目の前にはちっちゃい黒猫が、畳に背中をすりつけて、
「みゃーお」
と鳴いている。
部屋の隅には吹っ飛ばされて倒れている小針浜さん。
と、そこに。
「おーい、小針浜君、もう終わったかい?」
土足で入ってきたのは、昨日小針浜さんと一緒に来たおじさん課長だ。
ショットガンを片手に持っている。
くそ、最近の公務員は物騒すぎるだろ、日本の治安はどうなってるんだ……。
彼は倒れている小針浜さんと立っている俺を見ると、物も言わぬうちにショットガンを俺に向けて引き金を引いた。
「
ドンッ、という銃弾の音、しかし俺の魔法の方が早かった。
ショットガンの弾丸は俺の魔法障壁に阻まれてパラパラと畳の上に落ちる。
「なんだと?」
といっておじさんはガシャコンとリロードしなおし、もう一発。
しかし俺の魔法障壁はショットガンの豆鉄砲なんて貫通させるわけがない。
「にゃにゃにゃ~~」
俺の足に身体をなすりつけてくる子猫のミャロ、俺はミャロを片手で雑に持ち上げると自分の顔に押し付けて、
「すーーーっ」
と吸った。
ふむう、世の中の猫好きは猫をこうやって吸うことでリラックス効果を得ているらしいが、なるほど、これはいいものだ。
精神力と体力が満ち溢れてくるぞ。
「どういうことだ……?」
手慣れた様子で銃に弾を込め、俺に向かって打つおじさん、完全に殺しに来ているな、なるほど。
なるほどね。
じゃあしょうがない。
俺は片手でミャロを顔に押し付けながら詠唱を開始する。
うーん、ミャロのやつ、いい匂いでふかふかであったかくてやべーな最高じゃないか。
「ハンギン、マギン クツィリョ カ ウパン プトゥリン アング アキング マガ カアウェイ、ドゥルギン アット パタイン シラ……!」
実際には超高速で詠唱しているのでこれだけの呪文でも三秒とかかっていない。
右手に三百万円もかけて彫った魔力増大の術式のタトゥーのおかげだ。
詠唱が終わった瞬間、俺の目の前に直径五十センチほどの回転する空気の刃が現れた。
運転中の扇風機の羽みたいなもんだと思っていい。
ただ、扇風機と違うのは、それがプラスチックの羽でできているわけではなく、空気の流れそのものでできていて、そして――。
その切れ味は金属製の刃物をも超える。
俺は叫んだ。
「
「むおっ」
おじさん課長はショットガンでそれを防ごうとしたが、俺の魔法攻撃はそのショットガンをスパッと二つに切ったあと、おじさんの左腕までも根元から切り落とした。
「ぐおおおっ!!」
血をまき散らしながらのたうちまわるおじさん。
「ちっ、ガキがっ!」
目の端で小針浜さんが起き上がってサブマシンガンを俺にむけるのがわかった。
もう詠唱は終えているんだ三発までは魔法を発射できるぜ。
「
小針浜さんが引き金を引くより俺の魔法の方が早かった、俺の空気の刃は小針浜さんの右の太ももに直撃する。
スパーーーンッ!
という破裂音とともに小針浜さんのちぎれた右足は部屋のすみへとふっとんでいった。
ドバッと血が噴き出て、部屋中が血液のすごい臭いに包まれる。
これ……死んじゃったかな……?
ぎり、大丈夫かな?
救急車……。
人を殺すのはちょっと気分が悪いしな……。
そして俺は呟いた。
「この家、貸家なんだけど……。退去費用どうなるんだこれ……」
遠くからパトカーと救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
銃声を聞いた近隣の住民が呼んだのだろう。
うーん。
小針浜さんもおじさんも、まだ生きてる……。
俺はミャロを両手でかかえる。
子猫ながらちっちゃな乳首が見えるぞ、まあさすがにエロくは感じないが。
俺はそのおなかに顔をおしつけると、もう一回深呼吸した。
すーーーーっ。
アはああああ――――――いい匂いっ!
よし、治癒魔法をかけてやるか、その能力が俺にある以上、保護責任者遺棄致死罪とかになると悪いしな。
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