ふるさと

@nekochansong03

第1話


これは事実です。

我が家の名字からして、姫路のバカ殿の血筋とおもい、その後地元の近くの海辺の街(石巻)で廻船問屋をし、商売用の船を三艘持っていましたが、嵐で全て失い没落しました。当主は勢いがあり、センスがありますが、家内では横柄で親族に嫌われ、先を見越して当主の兄弟は資産を各々確保し、当主が没落しましたのに比べ、堅実に暮らして居ました。私のおじいさんも明治生まれで長生きでしたが、その大叔父も長生きな者ばかりで90まで生き、財産を持ち安泰に暮らしました。

例えば、そのひとりもひとり暮らしで、老人ホームで男女関係で揉め事を起こし、三十年以上前の話なので、1億円といっても、かなりの財産で誰か養子に来てくれと言ったが、その性格を知って居たので誰もならず、代々心臓の悪い家系だが、皆90以上生きたので、丈夫と言える。

私が結婚し、久しぶりに実家に帰った時、見慣れた実家の廊下に、私の亭主の持ち物の猫が端座していた。それを観て、私の亭主は大したこと無いのに、私の女親達は評価が高く、ただの雑種の猫も、多分血統書付きよ、と噂していた。その猫を観て、仲の良くない嫁と姑なのに、心をひとつに、ひいおばあさんの生まれ変わりだね、と噂していた。猫は丸まって、猫背でウトウトしていた。猫なので猫背なのは当然だが、生前、私のひいおばあさんは寡黙で働き者で、良くちょっとの暇も廊下で内職していた。


私の家族は、働き者でしっかり者の祖父が、建具の職人をして、私の幼い頃、同居は11人にも及んだ。内弟子の3人と年の近い叔父叔母、両親と祖父母と私の兄弟とひいおばあさん。昔の釜戸で、薪で煮炊きし、孫嫁の私の母は一番早く起きた。

それぞれに家族としての役目があり、子供の子守はひいおばあさんの役目で、今の80才には考えられないことですが、子守の先は寺門まえの広場で、子供達は皆遊んでいました。寺門なので、石塔が立ち、全くドロドロの沼がありました。深さはどれくらいか分かりませんが、小さな子供達には以前として危険で、気を付けるよう注意され、濁って居るというより、緑の色が際立っていました。その当時の地元は、クルマより馬が往来を行き、トイレ、風呂、馬小屋が、屋外に並んでありました。

ひいおばあさんの実家は、地元の人だったが、幼い頃に両親に死なれ、地元の親戚に引き取られ、学校にも通えず、小さい頃から子守をしていた。ひいおじいさんのは、他所者で、家が破産した為に、父子でかご屋の手作業を覚え、流浪していた者で、地元の顔役に定住を勧められ、その家に親戚として子守として養われていたひいおばあさんとの縁談を勧められ、結婚した。

私は子守をして貰った恩もあり、嫁を貰っても謙虚で肩身の狭いようすで居り、

食事の時、いつも末席でキチンとした御膳だが、最後のお湯で湯すぎ、食器を洗い物に出さなかったひいおばあさんの姿が一番印象的だった。

いつも控えめで、休む間もなく働いていた姿ばかりで、周囲もそのような評価なので、悪口の言うようもなく、その人が猫に生まれ変わるのが納得という口ぶりが、納得行かなかったが、その後の言葉が、子殺しだからね、仕方がないと、言った。


私は昔のひいおばあさんの生活を思った。

ひいおじいさんは、地元の顔役に定住させてもらった恩もあり、その勧めで納得して、ひいおばあさんを貰ったが、だんだん読み書きも出来ず、寡黙に働くだけの、辛抱だけのひいおばあさんに嫌気が差し、何とか離縁出来ないかと算段したあげく、近所の知恵足らずの男をけしかけ、レイプさせた。何度もレイプさせたので、その手引もしたことだろう。ひいおばあさんが妊娠し赤ん坊が出来ると、これは俺の児じゃないと、不義で離縁を申立て、確かに他の兄弟とは違っていた。それが認められないと、子守で連れて行かれた沼に、その子供を投げ入れ、ひいおばあさんが助けに行くことが何度もあった。

周囲の説得もあり、当時の離婚は死活問題であり、特にひいおばあさんの場合は帰る家もなかった。ひいおばあさんも周囲の考えに納得するしかなかった。

周囲の計らいで、二度目の婚礼が開かれた。その婚礼の最中にひいおばあさんの背中で、オンブされたその子供は死んだ。お腹が空いて泣き叫んだことも考えられるが、ひいおばあさんはそれも無視したのだろう。


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