お手伝いしたいお年頃

くさぶえ 舞子

お手伝いしたいお年頃

三歳の息子はいま、お手伝いしたいお年頃だ。

キッカケは義実家へ行ったとき、お義母さんが大根おろしをうまいこと手伝わせていたことからだった。(もちろん、使わない部分の大根おろしをさせていた)

息子はたいそう大根おろしすることが気にいったらしくはしゃいでいた。


それから、家に帰ってきてリビングとキッチンの間にベビーゲートを張っていたけれど、わさわさと腕と足をかけてキッチンに入ってくるようになった。

最初はだっこしてリビングに戻していたけれど、その時目に入ったアンパンマンふりかけを見つけて

「アンパンマン!」

と、いって見えているものだけに興味が沸いていたので、今のうちに出刃包丁や柳葉包丁などを万能包丁一本以外棚の上に隠した。


ほどなくして、引き出しや戸棚を開けるようになった。

すると、見覚えのある大根おろしのおろしがね(プラスチック)を見つけてしまってテンションがあがっていた。

「お手伝いす~る~、す~る!」

と、足にしがみついてきた。

「あいにく今日は大根する料理はありませ~ん!」

と、いうと少しガッカリしたようだったが、

次の引き出しを開けてテンション爆あがりしていた。大根おろしより魅力的な泡立て器だ。泡立て器の不思議な曲線のとりこになっていた。何に使うのかわからないところが気にいったみたいだった。叩いて楽器にしたりしていた。

これまで私はお手伝いさせたことはなかったが、思いきってさせてみるチャンスかもしれない【任せる】という母親としてレベルアップしてみようと思いあるものを混ぜてもらうことにした。


スーパーでフルーチェを買ってきた。牛乳とこれさえあれば完成するのでやりがいを持ってもらえると思った。案の定私がキッチンに入るとベビーゲートをわさわさ越えてきた。

(もはや、用をなしていないのでそろそろ取り外そうと思う)

そして、引き出しから泡立て器を見つけて

「お手伝い~す~る!」

と、フリフリしながら遊んでいた。

「じゃあ、これをしてもらおうかな~」

と、いってボウルに液を一袋入れて200mlの牛乳を注いだ。そして、手に持っていた泡立て器を借りて二~三回シャカシャカと、かき混ぜてみせた。

「さ、混ぜて!」

と、泡立て器を渡した。

カチャカチャと不馴れな手つきで混ぜはじめて

「もう、いーい?」

と、聞いてきたのでボウルの中を見るとまだ、スルスルしていてドロドロにはもうちょっとだった。

「まーだ、これ、フルーチェよ、食べたことあるでしょ?」

と、根気よくがんばるよう促した。

出来上がって、自分からお皿を出してきた。大きな器と小さな器を持ってきた。

大きな器の方にボウルを抱えてフルーチェを少し注ぎ入れた。そして、小さな器に残りのフルーチェ全てを注ぎこんだ。

(ギアーーーーーッ!)

と、思わずさけびたかったが圧し殺して。

キッチンマットがベショベショになった。

息子は何食わぬ顔をして小さな器の方をみて

「かあちゃんの分!」

と、大きな器の方を持ってスプーンを刺しこんで食べはじめた。

「あ、ありがとう。」

沢山盛ってくれたことに感謝をしよう。そして、完全に【任せる】にはまだまだだなと、流し台でマットを洗いながら思った。

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