代理戦争

王宮を辞し、ワン殿と別行動になってからヒノモトの者たちだけでの話し合い


ヤスケはなぜ怒っておったのだ?

「ヒデカーズさん、ワタシの国、アフリカというところにあります ポルトガルの宣教師、キリスト教をワタシの国に広めたね、ワタシの国で部族の間で戦が起こったね、商人が両方に鉄砲広めたね、鉄砲で殺し合いになり、戦に負けた部族は奴隷にされたね、ポルトガル人、その奴隷を売るね

ワタシは明やヒノモトに連れてこられたけど、新大陸やヨーロッパに連れていかれた仲間もたくさんいるね」


…どうやら話を聞くと、ヤスケはもともとアフリカのある国の部族のそれなりに上層部の出のようであるが、部族間の戦に負けた結果奴隷とされてしまい、宣教師に連れられ来日したようなのだ

幸いノブナガ様に気に入られ宣教師から譲り受けられたため、奴隷ではなく護衛として比較的自由の利く立場となれたものの、一歩間違えば生涯奴隷でもおかしくはなかった


ちなみにヨーロッパがポルトガルやイスパニアのある場所であり、新大陸というのはヨーロッパから海を隔てた西にある、イスパニアが新しく見つけた大陸とのことだ


「アヨータヤーでポルトガル人達がやってることもこれと同じね アヨータヤーもタウングーも、お互い鉄砲渡され戦をさせられ、商人は戦で儲けて負けた方の国の民は奴隷にされその奴隷を商人は売ることでさらに儲ける アフリカと同じことがこの南海でも起きるね ワタシ許せないね!」


「…で、あるな そしてそれはいずれヒノモトでも起きる ヒデカズも一向宗の者どもの死を恐れぬ一揆を見たことがあるであろう…宗教は人を狂わす一面もある

人が宗教で幸せになるのならばよいが、そうではなく己が不幸や不遇から宗教に救いを求めて逃げてしまうのだ

宗教に振り回されて生きることは、本当に生きていると言えるのか? 宗教がまつりごとにまで必要以上に関与しようとすれば一向一揆の再来ぞ ヒノモトはわやくちゃになるわ!

わしも最初は新たなる南蛮の文化や武器などを得るため宣教師は自由にさせておったが、ヒノモトの民が奴隷にされて売り飛ばされるとなれば話は別ぞ」


ノブナガ様の指摘が本質を突いている

商人の手伝いをしている自分達ではあるが、皆の言うようにこんな不毛な代理戦争の結果、商人だけを儲けさせて奴隷の供給源となってしまうことはどこの国でも避けなければならないであろう


そしてノブナガ様の指摘の通り今日のアヨータヤーは明日のヒノモトでもおかしくないのだ


アヨータヤーが戦に勝ったとしてもタウングーの民達を奴隷としないし南蛮商人達に奴隷とさせないのであれば、ナレスワン王子に助太刀してアヨータヤーを守るのが大義もありヒノモトにとっても利があるのではないだろうか?

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