新型テロリスト・ミラー五郎+

狐付き

恐怖のテロ行為

「大変です、総理! テロ予告です!」

 ある日、総理大臣のもとへテロ予告が送られてきた。

 とはいえそんなものは日常茶飯事で、今更驚くものではなかった……はずなのだが。


「いつも通り対処しておくように」

「ですがその……差出人はあの『ミラー五郎』なのです」

「なっ……ニセモノではないのか?」

「本物である確認が取れています」


 ミラー五郎────数年前に現れた新型テロリストである。

 どこが新型かというと、爆発物や毒、細菌兵器など一切使わないグリーンなテロリストでありとてもエコなのだ。それでもテロリストであり、少なくないひとが亡くなっている。決して無視できる相手ではないのだ。


 そしてテロ予告にはミラー五郎のマークが記載されており、このマークは警察や省庁などの一部の人間しか知らない。それで本物かどうかを調べているのだ。


「それで、内容は?」

「五日後の新宿駅での演説を中止しろということです。もし止めないなら新宿駅が地獄と化すとのことです」

「なっ」


 新宿駅。それはお世辞や誇張なく世界一ひとが行き来するハブ駅であり、そんなところを襲撃されたらどれだけの被害が発生するかわかったものではない。

 それにひとが多いということは、紛れて隠れるのも容易いということである。捕まえるのは難しいだろう。


「とはいえこれで中止にしたらテロに屈したことになってしまう。そうなったら他のテロリストなどが調子に乗ってしまう」

「病気ということにはできないでしょうか」

「一緒だ。病気という体を利用して中止にしたと思われるに決まっている」


 どうやら演説は行われるのは決定しているようだ。





 そして演説の二日後である今日。時刻は午後六時。帰宅ラッシュなどで混んでいる時間だ。

 突然電光掲示板や液晶などが切り替わり、カウントダウンが始まる。

 慌しくなる周囲。阿鼻叫喚。階段などは殺到し、いつ雪崩のような大惨事が起こるかわからない。

 そんなホーム────山手線の上下、小田急、埼京線……どことも問わず、全てのホームに電車が止まった。

 ドアが開くと、その中には大量のバッファローが搭載されているのがわかる。

 そしてそれらは一斉に飛び出し、ホームを駆け抜ける。


 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。逃げ惑う人々。警察関係者はなにもできぬまま、ミラー五郎のテロは完遂してしまったのだ。

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