【番外編】私人逮捕系チューバーvs女子中学生の妥当な結末

幽鬼倫理

第1話 結末

「……それでは、続きは警察署の方で、詳しく聞かせていただきますね。」



 俺の肩に置かれた警察官の手はズシリと、その本来の質量よりも数倍に重く感じられた。



 ああ……どうして……

 ……どうしてこんなことになってしまったんだ。



 俺は……。


 俺はただ、ネットの世界で活躍して、視聴回数を稼いだり、視聴者から正義の存在としてリスペクトされる「私人逮捕系チューバー」になりたかっただけなのに……。



「ふんっ!アホか。お前がやろうとしたのは正義でもなんでもない。お前は法律を知ったつもりになって、それを自分の欲望のために利用しようとしたただの小悪党だ。

 しかもその欲望を満たすために俺の友人を嵌めようとしやがって!」



 ……いま俺に向かってこんな風に暴言を吐く目の前の「女子中学生」。


 見た目は、黙っていれば学校内でもてはやされそうな容姿の整った美少女、のようにも見えるが、実は口を開けば汚い言葉遣いで暴言を吐く「ボクっ娘」。


 いや「オレっ娘」か。

 もっと正確に言えば「オレ様系女子」といった感じでもあるが。



 ……こいつに嵌められたんだ。


 ……こいつがオレのことを陥れたんだ。



 女子中学生に陥れられるなんて、皆は俺のことを馬鹿な奴だと思うか?


 愚かな奴だと思うか?


 ちがう。そうじゃないんだ。



 この女子中学生はオレ様系キャラで口が悪い「だけ」ではなかったんだ。



 異常だったんだ。

 


 おれの壮大なる計画は、彼女の手腕によって完全に破綻してしまった。

 それどころか俺は今から警察のお世話にならなければならない状況だ。


 くそっ! なんでこんなことになってしまったんだ。



 俺の目指した「私人逮捕系チューバー」のどこがいけなかったのか。


 俺の立てた「計画」の何が間違えていたのか。



 ……ここに書き記すのは、俺があの日に経験した「大失敗」について、俺自身が将来に渡っていつまでも忘れないようにするため、すなわち戒めのために、その事の起こりと顛末を記した、いわゆる個人的な備忘録のようなものだ。



 なので、このことをどこかに公開するつもりは毛頭ないのだが、いつか誰かが、なにかの切っ掛けで、若しくはなにかの間違いで目にすることがあった場合には、是非、俺と同じ轍を踏むことがないように、ゆっくりと目を通し、


「一体何が駄目だったのか」


もっと言えば、


「俺の行動のどの部分が、『何罪』に当たってしまったのか」


等を、よくよく考察しながら読み進めてもらいたい。




 切にそう願う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る