ご主人様に愛される拘束奴隷
有原優
第1話 朝
子どもの頃の記憶はほとんど無い、目が覚めるといつもこの部屋にいる。
私はいわゆる奴隷というものだ、ずっとずっと前、物心つくかつかないかぐらいの時にこの館のご主人に買われたのだ、ちなみにそのご主人様は隣で今も熟睡している。かくいう私は10年以上も前から両手両足を枷で繋がれている。手は後ろ手にされたまま。
これがご主人様の趣向なのだ。珍しいことに、このご主人様は私に手を出したことはない。せいぜいハグをするくらいだ。おそらく思うに私は愛玩動物のような役割なのだろう。だが私とご主人様の年齢はそこまでは変わらない、前にご主人様が言っていた話では四歳差だと聞いている。
「おはようニナ」
ニナ、それが私の名前だ、生まれ持った名前とは違うが、この屋敷に買われた時にそう名付けられ、そのままその名前が定着している。
「おはようございますご主人様」
「毎回言ってるけど、タメ語でいいんだよ」
「でもご主人様ですから」
その通りだ、私は下の身分、タメ語など許されるわけがない。それに両手足を縛られているのに、失礼な態度をとってしまったらどうなることかは全くわからない。私には対抗する手段がないのだ。
「もう十年も一緒に寝ているだろ、そろそろ心を開いてくれよ」
「まあ、心はそれなりに開いておりますけど」
どちらかといえば嫌いだが、育ててもらった恩もある。それを踏まえると、普通より少し下くらいだろう。
「それでいいんだよニナ」
そういいご主人様は頭を撫でる。
「さて起きようかな、ニナちょっと待ってろ、枷を外すから」
枷を外すと言っても、全部外れるわけではない、せいぜい足が動かしやすくなるだけのことだ。
「俺は歯磨きをしてくる、メイド、頼んだぞ」
「はいかしこまりました」
そういい、メイドさんは私の身格好を整えてくれる。
実を言うとこの瞬間も手枷が外されることはない、服の着替えは、きちんと枷を外さなくても出来るような形になっている。全く用意周到すぎる。この時間だけでも自由にさせてほしい。
「髪を整えていきますね」
「はい」
まるでお嬢様のような扱いだ。ご主人様は手枷足枷をつけさせときながら、最高級のお手入れをしてくれる、 おそらく手枷足枷がなかったら、私のことは奴隷とは誰も思わないだろう。不思議なことだ、なぜこのようなお嬢様のような扱いをするのだろうか、毎度疑問に思う。
「ではお食事ところまで一緒に行きましょう」
少しずつ歩いていく、足が鎖で繋がれているのでいつものことながら歩きにくい。気をつけないとこけてしまいそうだ。
「やあ、やっときたか遅かったな」
「失礼します」
そう言って私は椅子に着席する。椅子も豪華な金の椅子だ。絶対これは私が座るべきイスではない。
「メイドにはいつも俺が席につく前に、ニナの用意を終わらせとけと言ったはずだが」
「ご主人様が席につくのが早すぎるので」
「全く、ちゃんと終わらせてる時の方が少ないぐらいだなあ。よし、後で鞭打ちだな」
ここにいるメイドは全て奴隷である。むしろご主人様以外の全ての人が奴隷だ。皆鎖に繋がれているわけではないが、人権は無いのだ。
「それはご勘弁を」
「いやするね、ご飯終わったら調教室にこい」
「はい」
メイドは沈んだ顔をしている、まあ毎日無理難題を言われてるのでかわいそうだと思う。そもそもメイドが言う通り、ご主人様が椅子に座るのが早すぎるのだ。
「さてニナ一緒に食べようか」
「はい!」
「さて今日は出かける予定がある、ニナもついてきてくれ」
「はい、わかりました」
今日はお出かけの日らしい。この日は少しだけ嬉しい。なにしろ、外に出れる。もちろん枷が外れるわけではないのだが、幸せを感じることが出来る。だって考えてみてほしい。私はいつもこの屋敷で不自由に過ごしている。それなら外に出て気分を変えたいと思うのが常だ。
「一向に変わらんな、やったーお出かけだーとか言っても構わんのだぞ」
そう言って腕を上に大きく上げる。
「腕を動かしながら言わないでください、私は腕を動かせないのですから」
「そうだったな、すまない」
「まあ手枷を外してくださるのなら許しますけど」
「いや、何回も言っているだろう、その手枷は外すわけにはいかない、絶対にだ」
ご主人様は毎回、手枷を外してほしいことを示唆するようなことを言うと、決まってこのようなことを言うのだ。しかし、その理由は絶対に教えてはくれない。
一回しつこく迫ったことがあったのだが、その時いつもは私に対して暴力を加えないご主人様が初めて暴力を振るったのだ、それ以来少しだけご主人様を怖がることになったのだ。
「まあしかし、いつも敬語で遠い感じがしていたから、そう言う冗談を聞けて嬉しかったぞニナ」
冗談ではないんだけどね。
「ちょっとスピード遅くしていただけませんか、ちょっと咀嚼が間に合いません」
「ああ、それはすまない、少しテンションが上がってしまっているようだ、つまりニナお前が俺を喜ばしたせいだな」
そういいご主人様は笑うけど、私はせいぜい笑うふりをするだけだ。
私にとっては何が面白かったのかわからなかったが、しかし私にとってはご主人様の機嫌を取るのも奴隷の仕事だから笑うのだ。
「と、しかし俺も食べなくてはな、メイド!」
ご主人様はメイドを呼ぶ
「ニナに食べさせてやれ、もちろんニナの食べるスピードに合わせてな」
「はい!」
「ニナ様このぐらいのスピードでよろしいでしょうか」
「はい」
そのままのスピードで食べる
奴隷の身分で様つけをされているのはいつも気になっているが、おそらくご主人様にそう言うふうに教育されているのだろう、それかご主人様を恐れているのだろう。
思えば不思議である、私はご主人様のご機嫌を取るためにわざとご主人様にはむかい、メイドたちはご主人様の機嫌を取るために絶対にはむかわない。
役割が違うとはいえ不思議な現象である。
そんなことを考えていると食事が終わった、ご主人様はメイドに歯磨きを頼み、自分の支度をしに行った。
ご主人様は不思議なことに自分の支度にメイドをほとんど使わないのだ、メイドが足りないわけでもないのに
メイドを使わず一人で全てこなすのだ。
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