業務部船舶課の面々
羽弦トリス
第1話登場人物
ここは、愛知トランスコーポレーション株式会社の業務部船舶課。
8時半が始業時間だ。
この課の仕事の主な内容は、中古車を輸出するために、盗難車で無いか確認し、協力会社に巨大な貨物船に輸出国ごとに、どこに何台積み込むか指示する事だ。
朝からPCとにらめっこしているのは、係長の平岡利樹(44)だ。現場の叩き上げで、一番仕事を理解しているのだが、PCの画面には若いグラビアアイドルの動画が流れていた。
「オイッスー、もいっちょオイッスー」
やってきたのは松本健一(40)で主任だ。
「係長、また、あの子の水着姿見てんの?」
「だって、Fカップだよ!これなんて、殆ど裸だよ!」
「どれどれ」
松本は平岡のPCを除きこんだ。
「うわぁ〜。卑わいだね」
「そこの2人!また、朝から変なの見てるの?」
声を掛けて来たのは、課長の小林チサ(50)だ。
この会社は女性の管理職が多い。
「松本君が無理やり、見せろっ!て、僕を脅してきて……」
「課、課長違います。平岡さんが朝っぱらからグラビアアイドルの動画見てたのです」
「はぁ〜、あんた達、係長と主任でしょ?もっと、自覚を持ちなさい」
「はい」
「はい」
2人はようやく仕事を始めた。
「係長、内線1番にお電話です」
そう事務的言ったのは、滝川恵美(27)だ。容姿端麗で、大の男嫌いだったが、酒を飲むとキス魔になるとんでも無い女だ。
「はい、平岡です」
「平岡さん、この前の作業指示書が協力会社が分かり辛いから書き直して欲しいみたいです」
「何だと?お前が勝手に作り変えろ。今夜、奢ってやるから」
「えっ、いいんすか?」
平岡は、ペン回しをしながら話している相手は山田大介(30)だ。
コイツは、いつも金が無く、奢ってもらってばっかりのパチンカスだ。
「英語は使うな。カタカナにしろ。アイツら、よくポートを間違えて積むから」
「はい、わかりました」
休憩時間、平岡と松本は喫煙室で缶コーヒーを飲みながら、喫煙していた。
しばらく談笑していると、扉が開いた。
「やぁ、お二人とも。仲の良い事で」
2人は吸っていたタバコを消した。
「し、社長。どうして、船舶課に」
「ちょっと、見回り同心をしていてね、コストダウンしなきゃいけないでしょ。だから、気付いた所を見て回っているんだ」
この社長の名は、岡田純一(55)である。
「師匠、良かったら昼休みに将棋教えて貰えないかな?」
「もちろんですとも」
と、平岡と岡田は話していた。
「あのう、社長。平岡さんが師匠なんですか?」
「ああ、そうだよ。平岡君が入社したころは、君も知ってるように、私は船舶課で課長をしていたのだ。運良く、社長になれたがな」
「そうでしたか」
「師匠、昼休みは社長室で待ってるからね」
「分かったよ、純ちゃん」
岡田社長は喫煙室を後にした。
「平岡さん!もう、出世間もなくじゃ無いですか!しかも、社長を純ちゃんって……」
松本は、再び喫煙しながら言った。
「オレはね。係長止まりでいいのよ。僕は君を課長に推薦するつもりだよ」
平岡は缶コーヒーを一口飲みんだ。タバコには火をつけなかった。
「うちの課長は、小林さんじゃないですか?」
「小林課長は、部長を推薦する。ま、オレに任せとけ。今夜は山田と飲む約束をしたが、君も飲むかい?」
「うん。行きたい」
2人は喫煙室を後にした。
以上が、この作品の登場人物である。
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