告白

かざみまゆみ

第1話

「せっ先輩! 私と付き合ってください!」


 僕は同じ水泳部の後輩に告白されて嬉しかったハズ……。

 そう、通常なら嬉しい場面だが、僕はそれどころではなかった。

 僕はヒラリと身をかわして牛を避けた。

 後輩の女の子は器用にジャンプしながら、突撃してくる牛をかわしている。


「君の気持ちは嬉しいけど、今はそれどころじゃないかな!」


 僕も後輩に負けじとジャンプして牛をかわした。


「そんな……。私の一世一代の告白よりも重要な事が有るんですか!」


 後輩は巧みなステップを見せて牛をかわした。

 群れが巻き上げる砂煙で一瞬彼女の姿が見えなくなる。


「嬉しいよ! でもね、時と場合によるって言うか、一歩間違えたら牛の大群に踏まれて残念なことになるよ!」


 僕は飛び上がると牛の背を蹴って更に高く飛んだ。

 上空から見ると遥か地平の先まで牛の大群が見える。

 大暴走スタンピード

 全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが僕達の都市を蹂躙していた。


「先輩、答えてください!」


 後輩が僕を追いかけて上空まで飛び上がって来た。

 入れ替わるように下降する僕。

 牛の背をクッション替わりにして着地をすると、その背に乗ったまま牛たちと一緒に街中を移動する。

 後輩が牛の背を八艘飛びよろしくと近づいてくる。


「先輩、お返事は?」


 後輩が僕の乗る牛の背まで辿り着くと返答を迫った。

 僕たち二人は激しく揺れる牛の上で見つめ合う。


「もちろんオッケーさ。こちらこそ嬉しいよ」


 彼女が顔を赤らめて嬉しそうな表情を向ける。


「でも、この大暴走スタンピードをどうにかしないと僕たちの未来はないかな?」


 群れの先頭に立つ個体を止めない限り、この流れは止められない。

 僕たちは牛の背を駆け、先頭の個体に迫る。


「私たちの初めての共同作業ですね」


 彼女が僕の目を見ながら恥ずかしそうに独りごちる。

 僕たちは先頭の巨大な個体の背に飛び乗ると、恥ずかしがりながら手を握った。


愛の灯火LOVEビーム!」


 大暴走スタンピードの群れは巨大なピンク色の光りに包まれて消滅した。

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告白 かざみまゆみ @srveleta

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