第12話実家1
ガラガラガラ……。
車輪の音が石畳に響く。
後宮での出来事を振り返っていると、あっという間に実家に着いたようだ。
馬車が止まった振動を感じ、顔を上げる。
「到着いたしました。シャーロット様」
「ありがとう、リコリス」
リコリスの手を借りて馬車を降りると、そこには懐かしの
「シャーロットお嬢様、お帰りなさいませ」
門番は心得たかのように門扉を開ける。
「あらあら、皆、お揃いで」
扉の向こうには使用人たちが勢揃いして出迎えてくれた。
久しぶりに会う面々に笑みがこぼれる。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
執事のロスキンを筆頭に、メイド長、庭師、料理長、厩番、下働きなど、屋敷に仕える全ての人間が私を迎えてくれる。
「ただいま、みんな」
懐かしい顔ぶれに思わず涙腺が緩む。
本当に帰って来れたんだなぁ……としみじみ思う。
「お食事の用意はできております」
「流石だわ」
出来る執事は違う。私の帰る時間を予測していたかのような手際の良さだ。
リコリスを伴って屋敷の中に入る。
久々の実家の匂いにホッと一息つく。
やっぱりここは落ち着くわね~。
私は実家で用意された食事をゆっくりと楽しみながら、今後のことを考えることにした。
内容証明の送り先は、先王陛下の療養先と他の妃達の実家。
先ほど出てきたばかりの
侯爵令嬢である私に、そして元とはいえ、上級妃に対しての無礼の数々。
その証拠と共に。
無視することはできないはず。
無視すれば、裁判で決着を付けなくてはいけなくなる。
負けると分かっている戦いに望む貴族はいない。貴族でなくとも負け戦に挑む無謀な人もいないだろうけれど。
それに、なにも無茶な要求はしていない。「謝罪しろ」とか「許しを乞いにこい」とかは、全く。
誠意ある対応を。
それだけなのだから。
さて、どうなることやら……。
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