第10話 お前が言うんかい!


イクトside



 それから旅支度の準備を整え、王様への報告するため謁見の間に訪れる。

 前回と異なり、今回は王様に隣に王妃も並んで玉座に腰掛けていた。


 王妃の名はクラリスといい、アムティアのお母さんだ。

 なるほど、彼女を大人の女性にした顔立ちに大人の色っぽさを感じる。


 てか髭面王様め、よくこんな美人と結婚して子供五人も産ませたよな?

 金と権力ってやつか……リア充が羨ましい。


 いや、魔王討伐した暁には僕は美少女三人と結婚すると決まっている。

 よりハッピーかつスローライフを目指してやろう。

 


「――おい、勇者イクト! 陛下へのタメ口はやめろ! てか、まず跪け! 他国だったらお前、処刑されているぞ! 召喚されてから、もう一週間は経っているんだろ!? 礼節は学んでいるよな!?」


 グレン兄ぃが背後でごちゃごちゃ言ってくる。


 うっさいなぁ……僕は女神に選ばれた、いわば半神だよ?

 難癖付けられても国潰すくらい余裕だから何の問題ないって感じなのよ。

 また王族が権力武力で好き勝手するなら、こちらも好きにさせてもらぞ的な心境のワイ。


 周りの空気がピリピリしながらも、王様から旅の資金を頂戴することができた。


 いよいよ冒険の始まりだ。

 そして僕の快進撃が始まる。

 


 魔王城を探しながら、道中で遭遇した魔物を多く狩っていく。

 レベルを上げるため経験値を稼いだ。


 が、


「――グレン兄ぃ、僕のレベルが上がったの? ステータス・ウィンドウとかどうやって表示されるわけ?」


「んな概念はこの世界にない。アムから何度も説明されているだろ? あと経験値ポイントの振り分けもないからな。とにかくゲーム感覚は捨てろ。死んだら終わりだってことを忘れるな」


 なんだよ、偉そうに。

 自分は戦闘に参加しない雑用係の癖にさ。

 まぁ、おっさんだからマウント取りたくて必死なんだろうなぁ……カワイソ。


 けど、それより納得できないことがある。


 旅を続けて一カ月も経つのに、ヒロインである美少女達が僕に絆されないんだ。

 普通、ラノベなら登場してから2行くらいで惚れてくれるのに……チョロインが何故?


 アムティアは僕を見ては困った表情を浮かべて溜息ばかり吐いているし。

 エアルウェンは「この程度の魔法で大げさだな……」と言ったら口を聞いてくれなくなった。

 リフィナに関しては僕を空気扱いして「……勇者? そんなのいない」と存在を抹消される始末だ。


 にもかかわらず三人共、何故かグレン兄ぃを特別視して愛想よく慕い懐いている。


 アムティアは「師匠、師匠」って何かある度に頼っているし。

 エアルウェンも「グレンくん、お姉さん頼りにしているからね」と女の顔を見せている。

 リフィナでさえも「……ご褒美に頭ナデナデして」など小動物のように寄り添っていた。


 何よ、これ?

 この温度差はなんだ?


 ハッ!


 ま、まさか……NTRか!?

 これって寝取られちゃったパターン!?

 追放イベントのフラグか!?


 嘘だろ……やばくね。


 けど、それって最初は役に立たない無能な主人公に起こるイベントだろ?

 んで追放されてから強くなったぞみたいな。

 

 僕は無能なんかじゃないぞ!

 寧ろ前衛で悉く魔物を斃しているエースだ!


 そりゃ、時折めちゃめちゃ力をセーブした筈なのに気づけば民家を壊したり、森や大地を破壊しちゃうけどさぁ。

 んなのどうせ、イベントが終わればすぐに復元されるモノじゃん。

 

 何いちいち目くじら立てているんだよぉ……。


 それよりも追放フラグのことだ。

 このままじゃ、ガチでグレン兄ぃに寝取られちまうぞ!


 ――なら、やられる前にやれだ。



 その夕方。

 グレン兄ぃが雑用係と物資を集めている間、僕は女子達を呼び出した。


「みんな聞いてくれ――グレン兄ぃをパーティから抜けさせようと思う」


「「「はぁ?」」」


 僕のキメ顔した提案に、美少女達は唖然と大口を開けてフリーズした。



―――――――――――


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