第22話 尋問をする元英雄


「どうした? 隠蔽に気づいたか?」


「いや、そうじゃない。地上の追っ手だったからやっただけだ」


「ふざけんじゃねえ! 俺の足を! ぎゃあああああ!」


 ホムラに説明しようと思うと、星斗が自分の周囲に炎魔法を発動しようとしたので、右手を踏み潰して強制的に中止させる。


「かなり豪快に壊していくな。このまま殺すのか」


「いや、そうじゃない。この状況で時間をかけるとまずいからな。取引をしやすくしているだけだ」


「ぎゃああああ!」


 残った左手を潰すと交渉に入ることにする。


「君は山崎星斗だろう? なんでこんなところで魔族のふりをしてるんだ?」


「てめえ! ふざけてんじゃねえぞ! 人の体をボロボロにしやがって! これだけされて言うことを聞くわけないだろうが!」


「こっちの質問に答えてくれるならしっかりと君の体を全快させるよ」


「欠損を治す回復なんて聞いたことがねえ! 俺は選ばれし神童だぞ! そんな嘘、ろくに魔法のことを知らないガキしか騙せねえよ!」


 そんな常識があったのか。

 他に回復魔法を使った人間を見たことがなかったので知らなかった。

 信じられないようなら証拠を示すしかない。


「足が生えてきや……ぎゃあああああああ!」


 左足を治すと逃亡防止のためにすぐに踏み潰す。


「治せるのはわかった! だからやめろ! 答えてやるから!」


「拷問官も真っ青な尋問だな」


 教えられたわけでなく我流でやっているので多めに見て欲しいものだ。


「親父に頼まれて、ダンジョンに逃げた男の捜索と装置の回収をしていただけだ!」


「捜索については予想通りだけど、装置については知らないな」


「おそらく魔力増幅装置のことだろう。間違いないか、セイト?」


「それで間違いない! 言っただろう! 早く治してくれ!」


「いや、まだどうやって魔人の居住区や転移陣のことを知ったのか知りたいからな。それも答えてもらっていいか? 妹を傷つけた奴らのことはできるだけ知っておきたいんだ」


「それは親父から情報をもらっていたからだ! スマホのファイルに保存してある! 暗証番号は12345678だ!」


 親父。

 メサイヤの社長のことか。

 メサイヤは確か十二年前にもダンジョンの調査をしていたと言うことだが、その時の情報を流用したのか。

 世間には会社をめちゃくちゃに破壊されて、全てのデータを損失したと発表していたが、その発表とは真逆にしっかりと残っているな。

 どうやら保身のために嘘をでっち上げたらしい。

 ますます胡散臭い企業だ。


「ありがとう。これで十分だ。約束は守ろう」


「ああ、体が元にもど」


 約束通り、体を全快させると頭を踏み潰す。


「すまんね。妹を家ごと燃やされた時から襲撃者は必ず殺すことに決めてるんだ」



ーーー


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