第35話 桜散る中

「あら、懐かしい。」


 同級生との花見の準備をしている時に母が言った。


「へえ、咲良ちゃん。覚えている?あなた大好きだったのよね。」


 そう言ってアルバムを見せてもらうと俺と、隣に映っている女の子がいた。


「え、咲良!?」


「あら、覚えてたの?小学校は校区が違ったからね。貴方寂しがっていたのよね。」


 いや、今の今まで忘れていたよ。


「母さん、これ、持って行っていい?」


「いいけど、どうして?」


「見せたい人がいるんだ。」


 僕はアルバムを持って、外にでる。高校の同級生。今日、来る予定の子に咲良がいるよ。僕は知らずに君に二度目の恋をしていたんだね。年に一回の薄紅が散る中、自転車を漕いだ。

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