第5話 ホー。
フクロウの声がする。町中だというのに、不思議なこともあるもんだ。街灯の光の間に、その影を見つけられないかと目を凝らす。深夜のヴェールはとても濃くて、溶け込んでいるものを見つけるのは困難だ。
ホー。
音がするのに見つからないことは、苛立ちに変わっていく。私は、いつもそうだ。あるべき場所に鍵がない時、予定にはない雨が降る時、どうしようもない怒りを感じる。
ホー。
ここまでくると嫌がらせだろうか。目の端でかすかに動く何かを見つけた。私は駆け出した。いつもは通らない道を通った。
すると、フクロウは目の前に現れた。コンクリートの上に。意外と大きいその姿に驚く。
ホー。
苛立ったくせに、今度は怯える。人とは不思議なものだ。寂しい。悔しい。いつも何かわからないものを探して、追い詰められていく。人生はいつも、少しの街灯の光を元に歩いていく。何かあると苛立ちながら。
ホー。
フクロウは首を傾けた。その仕草は少しかわいかった。触って見れるだろうか。
ホホーウ。
フクロウが飛び立った。それはどこか寂しかった。
空を見上げる。今日は月がない。
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