【オリジナル脚本】現代劇/ヒューマンドラマ【短編】

悠宇呂

【短編】決心【ファッションモデル】

シナリオセンターで書いているオリジナル脚本

原稿用紙10枚分:約10~15分の短編 or 作品冒頭 or 作品の一部シーンの切り出しのような形


脚本の読み方は特殊なので、こちらを一読して頂けると幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/animaarca777/news/16818023214175603705


――――――――――――――――――――――――――――――


 執筆日:2023年2月24日

    

【登場人物】

三守 慧瑠える(14)中学生(17)高校生

三守結羽(17)慧瑠の姉

三守璃央(44)慧瑠の母

亀田映子(25)(28)カメラマン

斎藤一朗(36)警察官

近藤勇治(46)剣道部監督

阿久津舞香(14)剣道部員


【あらすじ】

中学生の頃は自信が持てない女の子だった三守慧瑠。モデルをしていた姉の言葉に勇気づけられ、モデルを志す事を決心する。


以下、本文


――――――――――――――――――――――――――――――

決心

――――――――――――――――――――――――――――――


○渋谷・全景


 


○渋谷駅


   人々の雑踏。


   ファッション誌『Sera』の巨大な広告の看板に三守慧瑠(17)の顔がでかでかと載っている。小さく『三守エル』と表記されている。


 


○都内・撮影スタジオ


   亀田映子(28)がカメラを構える。慧瑠がポーズを決めて、モデル仲間と共に写真を撮られている。


映子「エルちゃん、こっち見て~。はい笑って~!……ん~、あ~かわいい!最高!」


   映子が親指を立てサムズアップする。


   慧瑠が撮影された写真をチェック。


慧瑠「は~……緊張した……」


映子「ん~?まだ緊張するんだ?」


慧瑠「しますよ~。今でも恥ずかしくて……変な顔してませんでしたか?」


映子「またまたぁ。すっごくかわいかったよ!」


慧瑠「ありがとうございます……」


   慧瑠は顔を抑えて照れる。


映子「完成を楽しみにしててね」


慧瑠「はいっ」


   慧瑠は満面の笑顔を見せる。 


 


○三守家・外観(夜)


   タイトル『3年前』


   三守家の外観。遠景に富士山。


 


○三守家・居間(夜)


   カレンダーは4月28日まで/印。


   慧瑠(14)が居間でテレビを見ている所に三守結羽(17)が入ってくる。


   結羽は手にしたファッション誌『Sera』を慧瑠の目の前に広げる。


結羽「じゃーん!」


   雑誌には結羽の顔写真が紙面の半分ほどの大きさで掲載されている。


慧瑠「あっ!……わぁ~……」


   慧瑠は目を輝かせ、結羽の写真に釘付けになる。 


結羽「どう?凄いでしょ」


   慧瑠は無言で何度も首を振り、頷く。


結羽「ねぇ、慧瑠もモデル目指しなよ」


慧瑠「え、えぇ~……いいよ……私は……」


   慧瑠は首と手を横に振り拒否する。


結羽「なんでよ?あんたあたしより背が高いし、言いたくないけど脚も長いし、向いてると思うよ?」


慧瑠「で……でも、結羽みたいにかわいくないし、自信が持てないよ……剣道選んだのも顔が隠れるからだし……」


結羽「え~!?何それ~?そんな理由なの?」


慧瑠「あ、も、もちろん強くなりたいって気持ちもあるもん!」


   結羽は少し大きめの鏡を持って慧瑠の肩を引き寄せ、自身と慧瑠を映す。


結羽「大丈夫だよ。あんたこんなにかわいいんだから。あたしよりずっとかわいいよ」


   慧瑠は手で鏡を抑えてうつむき、


慧瑠「そんな事ない……そんな事……!」


   結羽は立ち上がり、


結羽「じゃあ、あたしが勝手に応募しとくね」


   慧瑠は目を見開き、結羽にしがみつき


慧瑠「や、やめて!それだけは!本当~に、やめて‼」


結羽「あはははは!あんたからかうの面白いわ~」


慧瑠「え~、なにそれ~……」


   結羽は身につけているネックレスを外し、慧瑠に差し出す。


結羽「ね、これ、あんたにあげる」


   慧瑠は目を丸くしながら受け取る。


慧瑠「え……?これずっと大事にしてたやつじゃん……」


結羽「着けてあげるね」


   結羽が後ろに回って慧瑠の首にネックレスを着け、鏡で見せる。


結羽「良く似合うよ」


慧瑠「そう?えへへ……」


   慧瑠は大切そうにネックレスを触りながら鏡に映る自分に満足して微笑む。


 


○渋谷の街並み


 


○ティアラ渋谷(アパート)・結羽の部屋


   電気のついていない結羽の部屋。カーテンの隙間から陽光がわずかに入る。結羽自身のポスターが貼られ、家族の写真が飾られている。


 


○同・台所


   綺麗に片付き蛇口から水滴が落ちる。


   遠くから救急車の音が聴こえてくる。


 


○三守家・居間(夜)


   慧瑠がネックレスを外して手に取り光を反射させてキラキラするのを見て、ニヤニヤしている。奥の台所では三守璃央(44)が夕飯の支度をしている。


   突然固定電話が鳴り響く。


   璃央が電話を取ると斎藤一朗(36)の声が聴こえてくる。


璃央「はい、三守です」


斎藤「もしもし渋谷警察署の斎藤と申します」


璃央「え、警察……?」


斎藤「落ち着いて聞いて下さい。結羽さんが――」


   慧瑠が電話している璃央を気にする。


   璃央が突然崩れ落ちるようにしゃがみ込む。慧瑠は不安な表情。


 


○山梨県・小瀬スポーツ公園武道館・外観


   『第XX回山梨県中学校剣道選手権大会』という横断幕が掲げられている。


 


○同・武道館アリーナ


   慧瑠が凄まじい気迫で剣道の試合をしている。近藤勇治(46)、阿久津舞香(14)他部員が見守る。


 


○同・武道館二階客席


   客席では璃央が見守っている。


 


○同・武道館アリーナ


   会場からは声援が響くが、近藤や部員達は声を押し殺し見守る。


近藤「(小声で)よし、良いぞぉ三守……」


舞香「(小声で)慧瑠……頑張って」


   舞香は祈るように両手を合わせて握る。


   慧瑠が叫ぶような声で面を打つ。


慧瑠「メェーン‼」


   慧瑠の面が決まり勝利する。審判が白い旗をあげる。会場が沸き立ち、近藤や剣道部員達は控えめに歓喜する。


 


○同・武道館二階客席


   客席の璃央がハンカチで目を拭う。


 


○同・武道館アリーナ


   試合を終えた慧瑠が正座して面を外し「ふぅ~っ」と息をつく。


   会場でカメラを構えていた亀田映子(25)が慧瑠に注目し、すかさずシャッターを切る。  


 


○三守家・居間(夜)


   カレンダーは8月30日まで/印。


   山梨県中学校剣道選手権大会の準優勝のトロフィーが飾られている。


 


○同・慧瑠の部屋(夜)


   壁にはモデルとしての結羽のポスター


   が貼られ、棚には写真が飾られている。


   慧瑠は結羽の写真をじっと見ている。


 


○(回想)三守家・居間(夜)


   結羽が手にしたファッション誌『Sera』を慧瑠の目の前に広げる。


結羽「じゃーん!」


   雑誌には結羽の顔写真が紙面の半分ほどの大きさで掲載されている。


    ×    ×    ×


結羽「ねぇ、慧瑠もモデル目指しなよ」


    ×    ×    ×


   結羽は少し大きめの鏡を持って慧瑠の肩を引き寄せ、自身と慧瑠を映す。


結羽「大丈夫だよ。あんたこんなにかわいいんだから。あたしよりずっとかわいいよ」


    ×    ×    ×


   結羽は身につけているネックレスを外し、慧瑠に差し出す。


    ×    ×    ×


   結羽が後ろに回って慧瑠の首にネックレスを着け、鏡で見せる。


結羽「良く似合うよ」


 


○三守家・慧瑠の部屋(夜)


   慧瑠は嗚咽し、泣き出す。


慧瑠「うわぁああ……結羽……結羽ぅ……」


 


○同・外観(朝)


   三守家の外観。遠景に富士山。


 


○同・慧瑠の部屋(朝)


   慧瑠がファッション誌『Sera』の最新号を見ていると、モデルオーディションのページが目に留まる。


 


○(回想)三守家・居間(夜)


   結羽が立ち上がり、


結羽「じゃあ、あたしが勝手に応募しとくね」


    ×    ×    ×


慧瑠「や、やめて!それだけは!――」


 


○三守家・慧瑠の部屋(朝)


   思い立ったように慧瑠は立ち上がり、結羽のポスターに話しかける。


慧瑠「ね、結羽?私……決めた!私もモデル目指すよ!……結羽が叶えたかった事、私が目指して良いよね?」


   鏡を見てネックレスを握り締める。


慧瑠「真実を知るためにも……」


   慧瑠はキッと前を向いて、覚悟を決めた顔で呟く。


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