新橋スラッガーズ!!
タカナシ トーヤ
第1話 卒団
秋の最後の公式戦が終わり、新橋スラッガーズの6年生5人が卒団した。
俺のチームは全部で11人。6年生が抜けたらチームの人数は6人になり、試合をするのに必要な9人より少なくなる。
この事は、前々からみんなわかっていたから、監督、コーチ達や、保護者達、俺たちも頑張ってメンバーを勧誘していたが、夏に2年生の悠太が増えただけだった。悠太が入ってなければ、今頃5人になっているところだった。
「みんな、これから自分達がやること、わかってるよな?今の人数のままじゃ、春になってまた公式戦が始まった時、試合に出られないからな。各自、全力でチームメンバーを集めるように!!」
監督が厳しい声でみんなに言った。
「はい!!!」
みんなも大きな声で返事をした。
練習が終わったあと、1人で素振りをしていると、キャプテンの真白くんが声をかけてきた。
「なぁ咲夜、俺たち本当に、春から試合できんのかな。」
「知らないよ。みんなで頑張るしかないって、監督もいってただろ。」
真白くんは、色白で、ほっそりひょろひょろとしたキャプテンだ。すぐに泣くし、弱虫だけど、優しくて、下級生のみんなを励ましてくれるいいやつだ。
5年生は真白くんしかいないから、自動的にキャプテンになったのかもしれない。
そんな俺も、たった1人の4年生だ。
新橋スラッガーズのメンバーは、6年生がほとんどだったので、残っているのは、レギュラーメンバーである俺たちと、3年生が2人、あとは新入りのベンチメンバー、悠太と、1年生1人だ。
高学年が一気に抜けてしまったのは、人数も心配が、なによりも、チームとしての実力が心配だ。俺たちのチームは、低学年の割合が多くなってしまった。
「俺、エースになれる自信とかないよ‥」
真白くんが弱々しく言った。真白くんのポジションは、今までライトがメインだったが、今残っているメンバーで、ピッチャーとして一番試合に出た経験があるのは、真白くんだ。
「真白くん、いつも俺たちに、君なら出来る!って声かけてくれるよな?なのに真白くんは、自分はできないってゆうのか?頑張ろうぜ。俺きっと、このままキャッチャーで、真白くんとバッテリーだから、これからも頼むよ。よろしくな!」
そう言って俺は、素振りをやめ、真白くんとキャッチボールを始めた。
真白くんの投げた球が、いつもより取りやすく感じる。
俺は全力で球を投げ返した。
もうすぐ雪が降る。
春からの試合で、監督達が誰をどのポジションにするつもりなのか、まだ俺たちは知らない。
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