手合わせ。
「それでは、お好きなタイミングで仕掛けて下さい。」
馬車を修繕する間メレンブルク家でお世話になる事になった。
セバスさんから久々に手合わせを願われる。セバスさん程の実力者と手合わせをするのはこちらからもお願いしたい程で断る理由はなかった。
戦闘態勢に入った、俺とは裏腹にセバスさんはニッコリと笑い手を後ろに組み棒立ちしていた。
その無防備のハズの姿からは考えられない程の圧迫感と緊張があり・・隙が無かった。
「おやおや、イグナルト様からいらっしゃらない無いのでしたらこちらから行かせももらいましょう。」
ダンっと地面を蹴り俺の方に猛スピードで距離を詰められる。
まるで雷の様に速く文字通り瞬く隙もなかった。
そのまま頭を振り下ろし頭突きを繰り出す。
危機一髪のタイミング、まさに紙一重で避ける。
強者との久しぶりの戦闘で一気にスイッチが入る。
「おや、騎士団をやめ、体が鈍っていると思いましたが・・・杞憂のようで安心しました。」
「いえ、危機一髪でした。・・自分自身の衰えに驚きました。」
4年間体が劣らない様に運動や訓練は騎士団にいる時程では無いが鍛えていた。
それでも、本場を離れていたブランクは大きい様で体がイメージ通りに動かない。
「それでは行きますよ。何分・・・いえ、何秒耐えれますか?」
セバスさんの猛攻撃が始まる
右、左、左、正面、上
四方八方からセバスさんの頭突きが襲いかかる。
執事とは思えない無粋な攻撃を繰り出し続ける。
頭突きとはいえ、格闘技熟練者の打撃以上のスピードで避けるの事で手一杯だった。
が、セバスさんの猛攻を避け続けるうちに徐々に騎士団時代の記憶が呼び起こされ、さらに体も思うようには動く様になり始めた。
右、左、左、上、左はフェイントで正面。
よし、攻撃の軌道も読めてきたし、体も温まって来た。
そろそろ、こちらも反撃と行こうか。
セバスさんが正面から攻撃を繰り出すその攻撃を利用してこちらも反撃に出る。
正面から闘牛の如きの攻撃を飛び越える様に交わす。セバスさんの背後を取った
セバスさんがこちらを振り返るその一瞬の間に後頭部向けて後ろ回し蹴りを喰らわす。
取った。
そう思った瞬間今まで後ろに組んでいた手を解き俺の蹴りを最も簡単に受け止めた。
「おっほっほっほ、さすがイグナルト様、私に手を使わせるとは。・・劣ったとは言え、元騎士団内で3本の指に入る程の実力者・・これより、セバスも少し本気を出しましょう。」
セバスさんが戦闘体制に入った。
さっきまでの純粋な威圧感や緊張がなくなり、代わりに殺気が溢れ出す。
ここからが本番だろう。
「セバスさん、本気でお願いしますよ。」
「それはイグナルト様次第です。」
「分かりました・・次は俺から行きますね!」
先制を仕掛けた俺の方からだ。
今出せる本気の蹴りや殴りで相手に息を着かせる暇も与えない猛攻撃を繰り出す。
しかし、そんな全力の攻めも赤子を操る様に弾かれる。
そう、攻撃を受け止めるではなく弾かれる。
俺の猛攻にタイミングを合わせて適切な力加減で俺の攻撃を弾いているのだ。
そんな、神技を出来るのはセバスさん以外にはセアラさんぐらいしか知らない。
「いい攻めですね。このセバス・・血が滾ります。」
「クソ、なんでそんなに余裕に笑えるんですか?」
「違います、余裕では無いので楽しくて笑ってしまうんです。」
「相変わらずの戦闘狂で安心しましたよ。」
ジャブ、ジャブ、右ストレート、左フック、回し蹴り、
相手の動きをしっかり確認して最適な攻撃を繰り出してるハズなのに全て弾かれる。
まるで、俺の動きを読めてるように。
クソ、拉致があかない・・・こうなったら一か八かであれを試すか。
セバスさんの意識を下ではなく上の方に目線を送るために上半身や顔などを集中的に攻める。
すると狙い通りにセバスさんの目線が上に向く。
そして視線が上を向いた瞬間にアッパーを繰り出す・・・フリをセバスさんの顔を目掛けて蹴り上げる。
しかし、何も普通に蹴り上げた訳ではない。
蹴り上げる際に一緒に地面の砂がセバスさんの顔にかける。目に砂が入り思わず目を瞑るセバスさん。
人によっては卑劣で褒められた行為ではないと思うかもしれないがこれも師匠であるセバスさんの教え。ルールがあるのが格闘技であり、ルールーがなく勝利をする事が戦闘である。
戦闘では卑劣な手を使ってでも勝ちなないといけないと教わっていた。
俺はその教えを素直に聞き入れただけであった。
そして教えを遂行した俺は砂で苦しむセバスさんに向け蹴りを繰り出す。
よし、入った・・・と喜んだのも束の間セバスさんは俺の蹴りを片手で受け止め様る。
これも通用しないのか・・・
「いいですね。勝利に対するその貪欲さ・・セバスは嬉しいです。戦闘はこうではなくては。」
セバスさんは足を広げ、腰をおろす。
来る、セバスさんの技が・・・まともに食らったら骨の一本や二本は簡単に持ってかれる。
次に来るセバスさんの攻撃に耐える為にこちらも全神経を使う。
「それでは参ります・・・メレンブルク家流おもてなし術【ご挨拶】」
メレンブルク家おもてなし術【ご挨拶】それはただの正拳突きだった。
暴力は貴族にとって無作法言いセバスさんが名前だけを変えていた。
速い、避けるか?・・
いや、間に合わない。受け止めるしか選択肢がない。
正面から来る打撃を受け止める・・しかし、威力があまりにも強大で受け止めて切ることができずに体が吹き飛ばされる。。
クソ、このままだと体がどこかに衝突する・・仕方ないか。
ケガをしたら元々こもない、ここは俺の負けを認めよう。
「
炎色魔法イグスで体から炎を噴射、その反動利用して、威力を殺し大怪我は間逃れた。
今回は魔法なしに純粋な肉体のみ格闘技術の手合わせ、魔法を使った時点でこの勝負は俺の負けだ。
「おっほっほ、勝負ありですね?」
「やはり、純粋な体術になるとまだまだです。」
「いえ、この私に60%の本気を出させるとはやはりイグナルト様は素晴らしいです。」
60%・・現役時代なら75%までの本気を出させることは出来たのに・・やはり体を鍛え直した方が良さそうだな。
「今度は魔法あり、武器ありの手合わせをしますか?」
「いいですけど・・この館吹き飛びますよ?」
俺は見学していたローズに目を向けると首を横にふる、予想通り本気の手合わせ・・いや、決闘は流石に無理な様子だった。
「それは・・残念です」
セバスさんは気を落とし、執事の仕事が残ってると館に帰って行く。
本当にあの人は執事の時と戦闘の時で別人になる。
「イグナルトさん、次は俺と手合わせお願いします。」
「おぉ、レオンか。 いいぞ、かかってこい。」
俺も体が訛っているのでこれを機に体を鍛え直そう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます