任務報告
(イグナルト視点)
◆マハイルの家周辺
「さぁ、依頼も終わったしシエルに本でも読んでやるか。」
任務を終え、一足先に帰って来た
理由はライアスさんに任務完了の報告を告げる為に、、、
というのは建前で本音は帰ってシエルに本を読んであげたかったからだ
今の時刻が16時を過ぎた頃だろうシエルもとっくの前にお昼寝も終わっているはずだ、帰ると本を読んでとねだって来るだろうな、、
ぐへへ、、、
やべぇ、変な声出た。。。
でも任務が終わったから今日でシエルとお別れになるのか、、
この三ヶ月間任務の調査の為にマハイルさんの家に泊めて貰っていた。
任務が終わってしまえば、この家にいる意味もなくなる、、
そうなればシエルともお別れになるのかぁ
「はぁ、もう一回盗賊出ないかな、、、」
いかん、何を考えてるんだ俺は、、、、
シエルと別れたくないからと盗賊の出現を願うなんて、、、
なんて俺はバカなのか?
、、、しかし、俺も変わったな、
三ヶ月前までは子供と関わるのを控えていたのに、
シエルと共に過ごすうちにいつの間にか他の子供とも普通に接する事が出来そうだ、、、
いや、他の子は要らないシエルがいい、、
またバカを言っているな俺、、、
最近シエルの事で頭がいっぱいだ、、、、
俺はシエルとのこの3ヶ月間を思い出す
『おとうさん、ごほんよんで、、』
『おとうさん、いっしょにねんねしよ?』
『おとうさん、ごはんおいしいね、、』
『おとうさん、あたまなでなでして、、、』
『おとうさん、、、、だいしゅき』
だいしゅき、、だいしゅき、、、、、だいしゅき、、、、、
俺の心の中で反響するシエルの【だいしゅき】ボイス、、、
こんな事言われたら俺も大声で答えるしかない、、
「俺もだいすきだぁぁぁぁ、、シエルゥゥゥゥ―—!」
「わぁ、びっくりした」
俺はまだ森の中にいると思い大声で叫んだが、、、
今、目の前にあるのは、、、
俺が三か月間住んでいたマハイルさんの家だった。
考えていて気が付かなかったがいつの間にか目的地に着いていたのだろう。
そして先ほど聞こえた驚きの声の正体は家の外で洗濯物を取り込んでいるマハイルさんだった。
マハイルさんの目には【なに、このヤバい奴】と書いてあった。
「急に大声でなに?シエル大好きって?」
「いえ、そのそれは、、、」
「私の方が好きなんだけど、、」
「はい、仰る通りです、、すいません、、」
「分かればよろしい、、」
マハイルさんはシエルの事になると自分を忘れて暴走するから怖い、、、、
いや、俺もか、、、
「まぁ、イグがシエル好きなのは知ってるけどね。」
「え、そんなに態度に出てました?おれ隠してたつもりなんですが、、、」
「態度もそうだけど、良く寝言で、、シエル好き、、俺の娘だ、、とか言っていたわよ」
まじか、、、、
マジか、、、くそ恥ずかしい、、、
「ホントですか、、」
「ほんと、、、」
「くわぁぁぁ、、くそ恥ズイ、、、」
俺は再び大声を出す、すると俺の叫声に驚いて家からライアスさんが出てきた、そのあとに続くようにシエルも出てくる
「なんだ、さっきからうるさいな、、」
「あ、おとうさん、おかえりなさい」
シエルが俺に抱きつく。
この子はまたクツも履かないで裸足のまま駆け寄ってくる、何度言っても靴を履いてくれない。
嫌いなのはいい、
がせめて外では靴を履いて貰いたい、ケガをされては困る、、
いや、逆に考えよう
シエルはクツを履く暇も惜しんで俺にお帰りの挨拶をしてくれたんだ、そう考えると涙が出てきそうだ。
「おとうさん、ないているの?」
「いや、大丈夫、大丈夫だよ、」
いかん、何泣こうとしているんだ俺は、、
別にシエルは靴を履くが嫌いだから履いてないだけだ
なのに俺は、、、
なに、いいように考えているんだ。
「おとうさん、なかない、いいこいいこ」
シエルが俺の頭を撫でてくれている、そこで俺は一つ決心をする事にした
「よし、シエルを娘にしよう、」
「やったー」
シエルも喜んでくれたのでこれで俺らは親子だ、、、
「なぁマハイル、コイツ3ヶ月前までこんな奴じゃ無かったよな、」
「うちの娘、、恐ろしいわ、、」
「イグ、お楽しみ中に悪いが任務の報告を、」
「はい、まず盗賊の数は全員で48人で最初の報告の人数より3人少なく今調査中です。ケガ人は出ましたが死亡者ゼロで重症者は看護兵が治療中です、、ただいま5割が監獄へ移送中であり夜までには全員の移送が完了すると思います。」
「イグ、、仕事への切り替えの速度半端ないわね、、」
「おとうさん、おしごとちゅう、、」
俺は今回の任務のすべてを報告した
説明中シエルに気を取られそうになったが必死で我慢した。
「了解した、詳しい報告書は後で他の兵がくれるだろう、これでお前の任終了だな、ご苦労」
「はい、」
「それにしてもイグ、お前すごいな?」
「すごい、、なにが?」
クライツさんが褒めるなんて珍しい、いつも仕事では褒めないのに、、
「仕事で褒めないクライツさんが珍しいですね」
「いや、仕事の件で褒めてるわけじゃない。」
だよな、ライアスさんが仕事で褒めるはずがないよな、、
じゃあ何を褒めてるんだろうか?
考えているとライアスさんは俺じゃなくシエルの方を見る
「シエルちゃんがこんなに懐くなんてすごいな、俺はダメだった。」
見つめられたシエルが怯えて俺の服を掴む、
ライアスさんにシエルが怖がってますと言うと「すまん」と謝り目線を俺に戻す。
でも確かになぜこの子は俺にこんなに懐いてくれるんだろう?
ライアスさんだけではなく、他の人も駄目だった。セラアさんは見た目が怖いから仕方ないとして、その他の人は別に怖いと言う程の顔でもないのになぜ?
一度本人に聞いてみよう
「シエルはなんで他の人は怖いの?」
「・・・・いろ」
「いろ?」
「おとうさんのいろ、きれいですき、おじさんはぐちゃぐちゃでこわい、、」
色か、、
「マハイルさん、シエルって、、」
「そうよ、見える子よ、、」
「それは厄介ですね。」
なるほど、この真実はこの子の希少性をまた上がってしまった。
【ヴァインスの血】【見える子】、、
これは人攫い連中に漏れたら厄介情報だな。
この子を狙われない様に少し対策を考えないと。
「ライアスさんこの森の近くに騎士団1隊を配置しましょう。この森は広く盗賊団がアジトにする事もありますし、それに」
「シエルちゃんの事もあるしな、、、分かった手配しよう」
「ありがとうございます」
「だがお前、シエルちゃんにそんなに懐かれていたらここを去る時大変だろうな、、、」
【ここを去る時】この言葉で空気が変わるのを感じ取れた
やばい、この状況は不味い気がする。
俺は静かにシエルの方へ目線を向ける
「えっ、さるって、いなくなること?おとうさんいなくなるの?」
ここから修羅場が始まる
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