風と桜

ヨシザワ

第1話

「…さん、あきさん…!」

誰かが俺を呼んでいる。

どうやら俺はケガをして倒れているようだった。


「う…ん?、おはよ…」

景色は変わって、今度は誰かが俺の隣で寝ているようだ。


「明日は函館だよ。田中さんに行ってこいって言われた。」

誰かがそう言いながらカチャカチャと食器を洗っている。


……

この次々と浮かぶ景色は何なんだろうか。

はたして夢でも見ているのか。

……


パチ。

目を開けると、そこはいつも通りの朝の風景だった。

少し雑に物が置かれた一人暮らしの自室。

テーブルの上には昨夜資料の確認をしたタブレットがそのまま置かれていた。


「…今日は朝から会議、か…」


寝起きのかすれた声の独り言。

ぼーとした頭のままムクッとベッドから起き上がり、朝の支度を始めた。


「はぁ、ねむ…」


黙々と顔を洗い、服を着替え、歯を磨き、コーヒーを飲む。


(腹減ったな。コンビニでなんか買うか)


そんなことを考えるよう頭が回り始めた頃には、夢らしき記憶はすっかり無くなっていた。





 


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