記録3


 その後、世界は過去最高の隆盛を記録し続けた。改革に見合った技術が生まれ、人類は常に進化していった。

 最初こそは争いもあった。暴虐の限りを尽くした特定の個人や地域に対する仕返しもあった。

 それも平定するための技術がもたらされたことで長くは続かなかった。

 各人が充実することで、そもそも争いをする気も起こらなかった。

 ようやく世界は正しい方向に進んでいける。誰もがそう思った。


 そんな余裕も二〇年が経った頃には焦燥に変わっていた。

 二割の二〇乗は、元の三八.三倍もの成長を要求するものだったのだ。

 人類はこの成長をすべく、あらゆる面での効率化、ツールの開発を進めていった。そして必死に間に合わせてきた。

 画期的だが非人道的な方法もいくつか考案されたが、それは人類滅亡前の最終手段としての運用としていた。

 なんとしてでも社会と未来とを守るべく邁進まいしんし続けた。


 しかし、二割成長の要求が変わることはない。

 これは二〇年後までに限界ギリギリの現状から更に三八.三倍成長しなければならないことを意味していた。成長するには経験タスクを作り出さなければならない。暴力的に増えていくタスクはさながら、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れだった。


 UBSをもたらした存在は少なくとも人間ではなかった。

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