マドロミノナカ

未来 歩

第1話

 夢を見ているような日々はいつの間にか過ぎ去っていく。昨日のことさえうろ覚えな日々を過ごして、虚ろな夢を見る。どちらが現実か夢かなんてわからない……なんてことはないが、何の変化もない毎日に唯一ある楽しみが夢になってきたのは間違いない。楽しみ、と言っても大したいい夢ではないが、すぐに目覚めて欲しい夢でもない。どこか懐かしいようなどこかで感じたことのあるような、そんな夢だ。

 ただ夢は覚める。夢は現実がなければ見ることはできない。ただその現実が起きて感じていたいものではないのは確かだ。

 現実は、直視できない。


          ◇


 朝六時、真っ暗な部屋にカーテンの隙間から溢れた光が差し込んでいた。

 目が覚めてからまずしたことはスマホを起動することだった。うとうとした目でゲームの日課をこなして、時間を貪る。ゲームが特に面白いという訳でもなく、ただただ画面に映る色鮮やかは世界を眺めている。見慣れたその景色を閉じて、目を瞑る。

 ぼんやりした頭で今日は何をしようか考える。十秒、三十秒、一分、五分と時間ばかりが過ぎていく。あれやこれやと考えて考えて、そのまま考えるのが面倒になっていく。そして、また眠りにつこうと、意識を手放した。


          ◆


 たまに夢の中で夢だと認識できる時がある。夢だと認識できたところで世界は大きく変わらないうえ、このまま夢から覚めなければどうしようかと思う。起きた時には何年後、何十年後となってるかもしれない。暗い暗い世界に、何も感じない何もない世界に消えるかもしれないと恐怖を感じる。

 どうしようもない過去がいつも今にのしかかり、後悔ばかりが残る。この考えはきっとこれからも続いていく。同じようなことを考えて考えて考えて、そして、考えることに疲れて、考えることを放棄して、今を擦り減らしていくのだろう。



 

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