異世界トラベラー~女神から受け継いだ『異世界ウィキ』で悠々自適な異世界探索!!~初めていく街やダンジョンも『ウィキ』の攻略情報やコメントがあれば安心安全です~

高野 ケイ

第1話 『異世界ウィキ』ってすごくない?

「ここって異世界だよね……どう考えても日本じゃないもん……」


 周りにお生い茂る木々と、森の中を走っている角のついたウサギを見て思わず間の抜けた声をあげる。

 突然の状態に俺はもちろん……


「やったーーー!! 異世界転生ってやつじゃん!! さっきのは夢みたいだけど夢じゃなかったーーー!!」


 うれしさのあまり大声をあげていた。この世界に来たきっかけは大体予想がつく。

 ブラック企業で働いており、地獄みたいな残業ばかりしていた俺は、睡眠不足と不摂生のためか突然胸が痛くなり意識が遠のいていったのだ。おそらくその時の命を落としたのだろう。

 そして、夢のような空間で女神と出会い、手違いで死んでしまったという俺は彼女に頼んで、望んだスキルと共に異世界に転生させてもらったのである。

 近くにあった池をのぞくと、鏡のように反射し黒髪の十七歳くらいのそこそこ整っている顔立ちの少年がうつっていた。

 これが今の俺ということか……



「ああ、俺は本当に異世界に来たんだ……剣と魔法のファンタジー世界にきたんだ……」



 俺はもともとファンタジー世界にあこがれていた。子供のころに親に連れていかれた様々な色でライトアップされていた鍾乳洞が美しく、当時はまっていたゲームの光景と重なったのもあるだろう。

 まさに異世界にいったような錯覚におちいるほど神秘的な光景に感動し胸をあつくしたものだ。


 それからエルフやドワーフなどの亜人がすむ魔法の世界、神秘的な世界を見るのがいきがいだった。ゲームとかでも目的なく歩いて様座な景色を見るのが大好きでシナリオを無視して放浪したものだ。

 もちろん、リアルでも学生時代は海外の城や洞窟などのファンタジーっぽいところによく観光にいっていた。


 そんな俺が異世界に来たのだ。テンションがあがらないはずがないだろう。そして、先ほどから感じる感覚。異世界定番のこれである。


「ステータスオープン!!」


 テンションをあげつつ声をはりあげると俺の脳裏にステータス画面が浮かんでくる。



++++

名前 穂村 信二

称号「異世界の探索者」

レベル1

HP 10/10

MP 5/5


攻撃力1

守備力1

体力1


ユニークスキル

『異世界ウィキ』


『フリージア王国』探求度 1%


++++++

 

「ステータス低いな、おい!!」


 基準とかわからないけど、たぶん1って最低値だよね………あとはこのスキルだ……希望通りのスキルならいいんだけど……


 海外旅行した時やゲームなどでガイドブックを見たりウィキなどをみて、いろいろ調べながら旅するのが好きだった俺が女神に頼んだスキルがこの『異世界ウィキ』だ。ウィキさえあれば何も知らない異世界でも楽しく生きていける、そう思ったのである。



恐る恐る脳内でクリックしてみるとばーっと情報が広がっていく。



『朽ちた世界樹の森』



 現在地らしき場所の地名と共に詳細な地図が脳裏に浮かんできた。まるで空中から撮影したかのよう大変鮮明な地図に丸いアイコンと宝箱、薬草、鉱石などマークが見えるである。

 しかも、リアルタイムなのか、丸いアイコンが動いている。



「この宝箱ってまさか……」



 おそるおそる一番近くの宝箱をクリックすると『ブロンズナイフ』と書いてあるのが見える。



「まじかまじか!!」



 宝箱マークのある草むらをあさるとそこには少しぼろくなっている金属のナイフがおいてあった。


「うおおお、すげえ!! これさえあれば……うお?」


 俺がナイフに触れた時だった。脳裏に情報が入ってくる。



★★★

ブロンズナイフ


 初心者冒険者愛用の普通のナイフ。少し使い古されているがまだまだ使えるよ。かっこつけて舌でナイフをなめてけがをする人がいるので気を付けてね


★★★


 どうやら触れたものの情報を手に入れることができるらしい。余計な情報もあったが気にしない。


「ということはこの動いているものは……」


 恐る恐るアイコンの方に近づくと、ふよふよとかわいらしい青いゼリー状の生き物が目に入った。

 地面をのろのろと一生懸命はっている姿はなんともかわいらしい。



「うおおおおお。スライムだ!! マジでファンタジー世界だぁぁぁ」

『スラスラーー?』


 テンションが上がった俺はまるで『ぷるぷる、僕は悪いスライムじゃないよ』とばかりに体をふるわせているスライムに抱き着くとひんやりとした気持ちの良い感触が包んでくれる。

 うおおお、鳴き声もかわいらしいしスライム最高!! ファンタジー最高!! こいつをペットにして旅とかもよいのではないだろうか? スローライフとかではペットとか定番だしね。

 そう思っていた時だった。



『スラーー(笑』



 いきなりスライムの体が触手状に変化し、俺を包み込んできて……



「あばばばばばば!?」



 その触手が自分の体内に俺の顔をひきづりこんできたのだ。こいつまさか俺を食べるつもりなのか? ドラクエ系ではなくウィザードリー系のスライムじゃん。


 異世界転生して五分で死んでたまるか!!


 俺が必死に先ほど拾ったナイフを適当に振り回すと、スライムの体内の核のようなものを貫く。



『スラーーー(涙』


 どこか悲しそうな鳴き声と共にスライムが一瞬かがやくとそのまま消えていった。あとにはドロップアイテムらしきものがおいてある。


「くっそ、あいつは悪いスライムだったのか……」


 先ほどスライムを倒したからか異世界ウィキに魔物一覧とという項目が増えていた。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


『スライム』


●最弱のゼリー状の魔物。一見無害なように擬態し、獲物を食らう。とはいえ、スライムの擬態はもはや一般常識なので引っかかるものは皆無。酔っ払いか常識知らずだろう


弱点 すべて


ドロップアイテム

スライムの粘液


レアドロップ

スライムゼリー

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++






「……くっ、異世界転生したばかりなんだから仕方ないだろ……」


 俺は一人でぶつぶつと言い訳をしながらドロップアイテムを拾う。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


『スライムゼリー』


 レアリティC


 スライムが捕食して興奮状態で倒すとドロップする。スライムの魔力がたっぷりと詰まっており魔力が回復する。けっこううまい。夜のお供にも優秀。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「……まあ、けがの功名かな。あれ、なんだろ。ステータス画面が何か光っている……」


 スライムを倒したおかげだろう、何やら見てくれとばかりに脳内で輝くステータスを確認するとスキルに『短剣術LV1』という文字が追加されている。ほかの情報もじっくり見てみようとした時だった。

 遠くで誰かの悲鳴が聞こえた気がする。あわててマップを確認すると二つほど変化があった。先ほど倒したからかスライムが丸いアイコンからデフォルメされたスライムアイコンに変化していることと、別の丸いアイコンが点滅しているのが見えた。それは今にも消えてしまいそうで……



「これは……誰かがピンチなのか?」



 魔物だったらにげようと俺が慌ててアイコンの方へと駆けるとそこにいたのは予想外の存在だった。



「あの子はまさか……?」



 木によっかかるようにして荒い息をしている少女がいたが、その耳はナイフのようにとがっていたのだ。

 まさかファンタジーにのみ存在するエルフというやつではないだろうか?



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