卒論
カエル
間に合え!!
僕たちには三分以内にやらなければいけないことがあった。
もしできなければ僕たちは仲良く1年間留年することになってしまう。
やらなければいけないこととは、卒業論文の発表会場に着くことだ。僕たちは卒論が必須科目なので絶対に発表しなけらばならない。なのに、僕たち山本ゼミはみんな揃って発表会場を間違えてしまった。僕たちは普段活動しているキャンパスの大講義室で卒論発表があると思っていたので、開始時刻の1時間以上前に会場に到着して発表準備を整えたのに、開始時刻になっても誰一人来なかった。そこで、おかしいと思って場所の確認をすれば間に合ったのだが、みんな緊張しており、気が回らなかった。そして、僕たちの発表時間の3分前になって、やっと山本教授から『早く来い!もう次お前たちの発表時間だぞ!遅れたら単位でないぞ!』という脅し文句付きの連絡が来ていることに気が付いた。
場所は同じキャンパス内の体育館だ。体育館と大講義室は地図では近いのだけれども3分で到着できるかは怪しいところだ。何せ、8階分の階段を下りる必要がある。そこから、A棟の出口はすぐ近いのだけれど、体育館の入り口は非常に遠い。A棟と体育館の入り口の間は現在工事のため通行止めだ。なのでB棟とC棟を回っていかないといけない。つまり、大学をほぼ1周することになる。
「やばい、開始まであと1分切った。」
「体育館は見えているのに…」
「裕也、先に走って行って時間稼ぎ頼む!」
「おう!」
一番荷物を持っている量が少なかった裕也に走ってもらった。
裕也が場を持たせてくれたら、その間に準備をするのだけれど間に合うか?
間に合ってくれ!!そう思いながら体育館に飛び込んだ。
だけど、現実はそう甘くなかった!
「はい。次のグループの発表を始めます。」
裕也が司会者の前で頭を抱えていた。
僕たちは山本教授に肩をトントンとされた。
山本教授の顔はどこか悲しそうで、僕たちも泣きそうになった。
この瞬間僕たちの1年間の留年が確定した。
卒論 カエル @azumahikigaeru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます