白い告白
ぼくわ、ここにつみをこくはくします。
書店に並ぶことは決してない、手作り絵本の一ページ目。点字が打たれた真四角は、本棚に収納されているシリーズの最新作だ。
私が幼かった頃、宅配便で新刊が届けられるたび、母は「まっしろ絵本が来たよ」と明るく言った。贈り主は、両親の幼馴染である。
かのじょのとくべつでいたいがため、あなたをりよーしました。そーしないと、おかあさんになったあのこと、えんがきれるとおもったのです。
文字を目で捉える人は、点字の文法を奇妙に思うらしい。伸ばし棒の使いどころが変だとか、話し言葉で「書く」のが慣れないと。
彼もまた、教本とにらめっこをしながら、針の打ち方を覚えたのだろうか。
あさましいかんがえでした。ぼくわしょーしんもので、そのおろかさにきづいたいま、かかえつづけることすらできません。
続く謝罪には、一家との交流を断つ心づもりまでもがしたためられていた。
「私の特別なら、あげられるんだけどな」
指で文字を潰し、自由帳に戻った冊子を胸に抱いて、天井を仰ぐ。あしながおじさんの住所は、伝票に平たく書かれている。それがために、凹凸で世界を探る私は、押しかけ女房になることすらできないのだった。
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