第2話 エントリーシート

 花嫁ゲームに潜入することを決めた私は、運営会社のホームページを見に行った。

 

『花嫁ゲーム――たった一人の花嫁に選ばれたあなたには、結婚準備金として10億円を差し上げます』


 トップページにはそんな文言が踊っていた。広く一般人から花嫁の候補者を集めているようだ。多くの参加者が、リスクの高いゲームだと知らずに参加するのだろう。

 

 「応募はこちら」と書いてあるページに飛び、花嫁ゲームエントリーシートをダウンロードした。

 PDFファイルを開くと、氏名や住所、年齢などの個人情報を入力する画面が現れた。


「うわ。年齢だけじゃなくて、身長と体重も書かせられるのね」


 エントリーシートには、他にも色々な項目があった。趣味や特技、好きな食べ物などについて質問される。まるで面接みたいだと思った。

 

「これ、全部答えないとダメなのかな……?」

 

 面倒くさいなぁと思ったけれど、仕方ないので正直に全て回答した。いくつかの項目は書く必要のあること? と疑問に思ったけれど。

 書類審査に合格して本戦に進めた場合、嘘で固めているとボロが出そうなので、事実に近いことを書いておいた。

 

「写真も添付しなきゃいけないんだ」

 

 私はプロフィール写真を貼付した。軽く化粧してスマートフォンで自撮りしたものだ。少し恥ずかしいけど、これも仕事だと割り切ることにした。

 

「これでよし」

 

 私は応募ページからPDFファイルを添付した。エントリーシートの記入画面が表示されたパソコンを見つめる。あとは返事を待ちながら、私のできることをやっていくだけだ。

 

「どうかお願い……」

 

 私は小さな声で呟いた。不安で頭がいっぱいだったけど、それでもやるしかないんだと思った。この依頼を受けると決めたのは私なんだから……。

 

【エントリーシート】

名前(ふりがな) 九条 アカネ(くじょう あかね)

年齢 28歳

生年月日 ××年9月16日

身長 158センチ

体重 ××キロ

靴のサイズ 24センチ

仕事 建築資材関係を扱っている会社で営業事務をしています。叔父が代表を務める会社で、安心して働くことができます。

趣味 美術館巡り

特技 書道

好きな食べ物 寿司

人生で一番絶望したエピソード

10歳の頃、海外で医師として働いていた両親に「誕生日くらいは帰国してほしい」とお願いしたら、飛行機事故で両親が死亡したこと。

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