現実世界で無双した野球選手の通訳ですがどうやら異世界での使命はこいつのXXXを残すことのようだ。

@tsuki_nouma

第1話  優勝のあとには

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前人未到、この男“大神 将星”《おおがみ しょうせい》が到達した軌跡は人類の野球史を300年進めたと言われている。

「現存するベースボールの全てが一人の突出したプレーヤーに敗北した」

「彼のためにベースボールは大幅なルール改定が必要である」

多くの識者たちが驚愕し討論が起きたことも納得できる。彼が残した記録は筆舌に尽くし難い。

人類野球の最高峰と呼ばれるメジャーリーグで投げては毎年のように2桁勝利、球速平均は105マイル、防御率0.5、打てば得点王とホームラン王確実、盗塁は年間80を数える。190センチオーバーの高身長と端正なルックスを持ち合わせつつ、謙虚な姿勢と冷静な思考力で人徳もある。彼の関連グッズは連日品切れで人気も圧倒的、彼がメジャーに挑んでから怪我で欠場が多かった年を除けばほぼ全ての年のMVPに選ばれ、昨年まで所属していた中堅チームでリーグ優勝、ワールドシリーズ制覇を果たし翌年には将星自らが提案した「チームのリーグ優勝を保証する」という内容で1年100億円の短期契約を結び弱小と呼ばれるチームへ移籍。しかし、彼が移籍したその弱小チームはまさに今日、今この瞬間にホーム戦でワールドシリーズ制覇を果たした。世界中の化け物たちが集う野球の本場で彼"大川将星"はまさに「無双」したのた。


そして、俺はそんな彼のしがない通訳だ。



彼がメジャーリーグへ挑戦を表明してから今まで10年余り彼の考えやその心情を代弁してきた俺には2度目のワールドシリーズ制覇を果たし、ヒーローインタビューを受けている彼の表情が浮かないことを見落とすことはなかった。仕事を離れれば年齢は二つだけ違うだけでお互いに気さくに話せる友人だ。長年一緒にやってきたこともあり、なぜ表情が優れないのか理由はすぐにわかった。彼の相談相手になるために選手の控え室に向かうことにした。



控え室の入口を閉めるとスタジアムの熱烈なファンの歓声も届かない。年期が入っているが手入れは行き届いている、弱小チームと言え、一流の選手たちが集うのだ。貧相な設備ではない。壁や壁際のロッカーなど色合いは多少違うがチームカラーのブルーで統一されている。天井にはテレビモニターがある。控え室からでもゲームの進行を確認するための用途だろう。

自分に割り当てられたロッカーに向かって座りながら着替えをしたり、ストレッチするための大きなベンチが複数個置かれ将星は自分のロッカーに向かうようにベンチに腰掛けてうなだれていた。



他のチームメイトは優勝の喜びと興奮をまだまだ現地で感じていたいのだろう、彼以外に控え室にいる選手はいない

「………」

「これからどうするか…だろ?」

「…えぇ」

「これで全てやり尽くしちまって、次の目標とかやりたいこと、そうそう見つからないよな。」

「…ですね、…ただ野球はずっと続けていたいす。」

彼は手にしていたボールの縫い目に沿うように指でなぞっている。

「というか続けないと…な…」

「あぁ、それは…まぁ…そうすね…」

野球に関しては人智を超えた才能を持つ彼だか、その代償なのだろう。彼には野球を続けなくてはならない理由があるのだ。

「ここに来て新しい壁か…」

「壁が無いって課題の壁だな」

ハハハと同じタイミングで2人が笑った。

次の瞬間、彼と俺の体が発光し始め、座っていた将星は立ち上がる。

「!?」

「な、なんだ!?」

2人はお互いの顔を見合わせるが何が起きているか

理解できず慌てふためく、

「将星!」

「平次さん!」

お互いの名前を呼び合うが刹那、光が強くなり相手の顔を認識できなくなる、眩しさで目を開けていることもままならなくなり目を閉じるが、それでは足りず腕で顔を覆い隠す。




ーーーーー



何かを監視するためだろうか?暗い部屋に複数の小さなモニター、中央には大きなモニターがある部屋が浮かび上がる、部屋が暗く全貌は把握できないがモニターを見てその人物がニヤッと笑う、八重歯が特徴的な口元だ。

「来たようじゃな。」



ーーーーー


光は体感で数十秒ほど続いたように感じる、

腕で覆った目に光子が微塵も感じ取れなくなった俺はゆっくりと腕を下げながら目を開けた。

将星は控え室での立ち位置と変わらない位置に立っていたがすでに目を開けていた。目の前の状況に何が起きたか理解できずただ立ち尽くしているようだった。


そこは先ほどまでいたチームの控え室ではなかった。

背の短い草が生えところどころ地面が露出しているが目の届く場所に数本ほど木も立っているが、大きな岩も所々転がっている。


「ここは…?今一体何が起きたんだ…?」

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