しょうか

佐々木実桜

わたし

私は恋をしていたそうです。


実際のところ恋と言っていいのかは分かりませんが、友達が「それは恋だよ」と言っていました。



私としては、恋じゃないと思うのが本音です。



あなたに向ける私の感情は、言葉にするには少し、いやだいぶ気持ちが悪く、そして苦しく、痛く、そして救いがないものなのです。



歯が潰れるほど噛み砕いてしまえば答えは簡単、ただの「激情」なわけです。



生きてきた中で、まさか私が抱えるとは思わなかったものでした。



私は人よりも感情の起伏が激しいゆえか、激しい割にか、何かを好きでいつづけることが、何かに強い感情を抱き続けることが特段苦手でした。


人も、物も、事象も、全部です。



人でも物でも何でも好きになってある程度の熱をもつ私の火は、気がつくとすぐ消えてしまって、

私はすぐに飽いてしまっていました。




どれだけ大きく激しい火も、私を振り回す感情の波には逆らえず、すぐに灰になりました。




私はずっと、誰でもいいから愛されたくて、誰でもいいから側にいてほしくて、そして誰でもいいから愛してみたかった。



だからずっと、私の中でひたすらに誰かを、何かを燃やし続けて、なんとか生きてきました。



「恋」ではなく「愛」だと主張したいわけでは決してありません。


こんな感情、「愛」なんて綺麗なものと一緒に括ってはならないのです。




誰かと結ばれても、何かを熱心にしてみても、私の火が燃え続けることはありませんでした。


出会い別れ、燃えて飽いての繰り返しの人生。



こうなる理由は、正直分かっています。


私は「わたし」が好きじゃないんです。


「わたし」


つまり自分に燃やす火を、自分に向けられない。



私の関心がわたしに向くことはなく、ひたすらほかに向き続けているだけなのです。




自分に「あい」を向けられない私は、心の中で誰かを燃やしてしまうことでしか生きられなかったのです。

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