第70話 海だ! 水着だ! クラーケン!?
「やったぁぁぁ! 海だよ! う!み!」
「そんなにテンション上げて溺れたりしないでくれよ」
「やだなぁ、イオリくん、私、スポーツはできる方なんだよ?」
「知ってるからあんまり心配はしてないんだけどな?」
「任せなさい!」
俺たちはイベント特設フィールドの浜辺に来ていた。
ご丁寧に水着が売られている露店や、浮き輪やゴーグルまで完璧に遊べと言わんばかりのラインナップが揃った店があったのでそこで1式揃えてきた。
「それより、どうかな?」
少し前屈みになって、水着を強調するように見せてくれるセナに少しドキッとしながらも感想を口からひねりだす。
「......いいと思う」
「え〜、彼女の水着を見てそれだけ〜?」
「とてもエッチだと思います」
「きゃ〜、イオリくんのえっちー、そんな目で見てたんだ〜」
綺麗な笑顔を見せながら、ほれほれこれがええんか?
と言わんばかりに水着を強調して煽り散らかしてくるセナに反撃したいがすれば俺が終わるので耐える。
「ふぅー、煽った煽った」
「テンション高くないか?」
「そりゃぁね! 昔は人魚のあだ名を欲しいままにしていた私にとって海はマイフィールド!」
「そんなに海が好きだったのか......」
「うん! アヤちゃんどう?」
「ちょっと怖いかもです」
「ならママに任せて! 泳げるようにしてあげる!」
うぉぉぉぉ!っと突撃する兵士並の雄叫びを上げながらアヤと一緒に海の方へと走って行ってしまう。
「セナってギャグ路線のキャラじゃなかったよな......」
あまりのテンションの高さに驚きつつも俺もゆっくりと2人の後を追った。
「綺麗だな......」
有名な観光地並に透き通った水、そして綺麗な砂浜。
景色を掲示板に上げるだけでもかなりの反響を貰えそうなくらいには美しい景色が広がっていた。
「イオリくんもこっち来て〜、一緒に遊ぼ〜」
「はいはい、すぐ行くよー」
「パパ、すっごく冷たくて気持ちいですよ!」
この幸せな日常をくれた運営に感謝しながら俺も海へと足を踏み入れる。
ゆったりとした波が流れていてこれなら泳ぐのも楽そうだ。
しかし、レベル上げの地でこんなにモンスターと出会わないというのはコンセプトとしてどうなのだろうか? 浜辺は遊びエリアということで湧かないだけだろうか?
「ね、ねぇ、イオリくん」
「どうした?」
「ゴーグルでちょっと潜って見てみてよ、なんか居るんだけど」
言われた通りにゴーグルをつけて海の中を覗いてみる、透き通った海はどこまでも見渡せそうな感覚に陥ってしまうほど綺麗だ。
しかし、そんな海に異質な何かがいる。
【アナウンス】レベリング島の浜辺でクラーケンが発見されました。
只今より、クラーケン討伐イベントが開催されます。
「え、ちょま、なんかこっちに来て......」
ずんずんと大きくなる何からまっすぐこちらへと向かって来て、俺の方に触手の1本を伸ばすと俺を浜辺へと弾き出した。
「ふべっ」
「い、イオリくん大丈夫?」
「いてて、ダメージは......ない」
「え、あれだけ派手に飛んだのに?」
「うん、1ダメージも食らってない、というかあれはクラーケンなのか?」
「デフォルメされすぎてちょっと可愛いもんね、なんか想像と違うかも」
俺たちがそんな話をしているうちに初心者さんたちが集まってきたのかゾロゾロと人が増え始める。
みな、入口で水着を買って我先にと海を飛び込んでクラーケンにダメージを入れる。
俺たちが倒してしまっては申し訳ないのでぼーっと眺めて戦いのゆくへを見守ることにした。
「おぉ、倒れたね」
「案外、すぐだったな、レイドにしては早い方か?」
「まあ、初心者向けだしね〜というか私アイテム手に入ってるんだけど」
「あ、俺も、イカの切り身? 海の家で美味しい食べ物と交換できるんだってさ」
「行ってみようよ!」
「アヤがまだ遊びたそうだし、俺が貰ってくるよ」
「パパ良いの?」
「せっかくの機会だからな、存分に遊ぶといい」
「ありがと......」
うちの娘が可愛いっ!
イカの切り身で交換した焼きそばやイカリングなどを持ってみんなの元へ戻り、レジャーシートを轢いてみんなで食べる。
こんなに遊べるなら今後もリゾート地としてこの島を残しておいて欲しいとまで思ってしまう。
「まだまだイベントは始まったばっかりだ! 遊ぶぞ!」
「「おーーー!」」
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