第61話 アヤ
アヤはどうやらこの状況に怖がっているのか、腰に携えていた刀を鞘ごとぎゅっと抱えるように抱きしめて辺りをキョロキョロ見回してはセナをじっと見つめることを繰り返している。
「イオリくん、私、ダメかも、、、」
「ど、どうしたんだ?」
「可愛すぎて無理っ」
その姿に悶えているセナを横目に何とか話しかける話題を探したいのだがどう声をかければいいのか分からない。
子供の対応はあまり得意では無いのだ。
「ふふっ、大丈夫そうね、隣に客室があるからそこでゆっくり話すといいわ、アヤちゃんこっち来なさい?」
「う、うん」
「可愛っ」
「セナが壊れた……」
ソフィアさんは部屋に案内するとそうそうにどこかへ出ていってしまった。
何やら行くところができたからということらしい。
そして俺には問題が残された。
「……」
「……」
じーっ
じーっ
目の前のこの2人をどうするかである。
セナもアヤもお互いのことを眺めあっているのだ。
セナは可愛いと褒めちぎりたい衝動を抑えているような感じだが、アヤの方は確実に緊張している。
「自己紹介をしようか、俺はイオリ、このアヤを召喚したセナの相棒だ、よろしくな」
「……」
無言ではあるがこくりと頷き、こちらに伝わっていることを教えてくれる。
「あっ、ずるい! わ、私はセナっていうのこれからよろしくね?」
「……」
少し勢いにびっくりしたのか数歩下がった後にこくりと頷いた。
「お、脅かしちゃったかな? ごめんね?」
「……」
ふるふると首を横に振り、大丈夫だと意思表示をしてくれる。
コミュニケーションは取れるらしいので、気長に信頼を勝ち取っていくしかないだろう。
「そうだ、服にこだわりとかあるのかな? 一緒に可愛い服探しに行こう……どうかな?」
「……」
頷いたので、どうやら良いらしい、アヤが今着ているのは和風の初期装備といった感じで簡素なものだ。
セナは可愛い子にかわいい服を着せて可愛いと叫びたいらしい。
「これとかどうかなっ!」
「これもっ!」
「あっ、これ可愛いっ!」
「あぁっ! 好きっ!」
アヤが着せ替え人形にされてから1時間程が経っただろうか、アヤがこちらをじっと見ている。
多分、あれは助けての表情なのだろう、好感度上げという意味合いでも助けた方がいい気がする。
「セナ、全部買っていいから、ソフィアさんに言われた契約獣登録をしに行こう」
「全部買っていいのッ!?」
「ゲームだからね、また稼げばいいよ」
「分かったっ! 店員さん〜♪」
俺は走っていったセナを横目にアヤへと近寄ると目線を合わせて少しだけ話をする。
「アヤ、セナがあんな勢いでごめんな? 悪いやつじゃないんだよ、きっと可愛いから可愛がってるだけで、嫌わないでやってくれないか?」
こくこくと首を縦に振ってくれたことに安心すると俺は立ち上がりセナを待つ。
アヤはじっとセナが走っていった方を見ている、俺もセナも慣れていない事ばかりだが、早く心を開いて貰えるように頑張ろう……
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